地上を移動して巡るのが一般的な観光ですが、八尾空港に行けば、セスナ機に乗って上空から大阪のまちを周遊することができます。今回は香港出身のトンさんが、百舌鳥・古市古墳群の一部として2019年7月に世界文化遺産に登録された「仁徳天皇陵」や「大阪城」など、大阪を代表する名所を空から眺めて楽しむ遊覧飛行を体験。空港周辺で楽しめるスポットとあわせて紹介します。
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大阪、ベイエリア:セスナ遊覧飛行 大阪城や世界遺産を上空から眺める絶景プライベートツアー
- 八尾空港から離陸し大阪市街を一望。大阪城やテーマパークなどの名所を上空1500ftから楽しむプライベートセスナ体験
- 上空だからこそ、世界遺産の古墳群の形やスケールを一望でき、その迫力を実感
- フライト後は、マニアックな航空グッズが揃う飛行機専門店へご案内
大阪市の近郊都市として発展した八尾市は、東大阪と並ぶ、ものづくりのまち。河内音頭の本場として有名であり、中には今東光による任侠小説の主人公「八尾の朝吉」を思い浮かべる人もいます。都心にほど近い立地でありながら自然も豊かで、名所や旧跡も点在。特産品の枝豆や若ごぼうを使い、地元出身の料理人らが腕を振るうご当地グルメも豊富です。
そんな八尾には国内でも珍しい、セスナ機など小型機が多く離発着する「八尾空港」があります。八尾空港には遊覧飛行サービスを提供している航空会社があり、朝日航空もそのひとつです。
セスナ機に搭乗しおよそ30分かけて空から大阪を一巡するツアーでは、大阪城や仁徳天皇陵(大仙古墳)などの史跡、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や夢洲など、大阪を代表するさまざまな施設の上空を周遊します。
※朝日航空では本来、個人での申し込みは受け付けておらず、旅行会社を通じて予約するか、団体の貸切に限定しています。
今回、そんな“空の旅“を一緒に楽しんでくれるのが、乗り物全般が大好きな香港出身のトンさんです。
Guide
香港出身、大阪在住。日本の文化が好きで、招き猫や達磨など日本の縁起物デザインを好む。けん玉好きが高じて音響エンジニアを退職。2016年にけん玉のブランド「Friday Kendama」を友人と立ち上げ、2022年5月に来阪。バイク、ジムニーなど乗り物全般好きで、現在はバスの運転手の仕事をしている。香港のメディアで、街歩きや酒場探訪など日本の文化を伝える記事を執筆中。
行きたかったあの場所も、この場所も。大空の“特等席”で遊覧する感動体験!
この日の八尾市はうっすらと雲が広がる空模様。青く澄んだ空も気持ちのいいものですが、風もない曇天はある意味、撮影日和。駐機場には技術スタッフによる万全のメンテナンスを通過したセスナ機が整然と並び、今か今かと滑走を待ちわびていました。
飛行前の安全説明などを行うブリーフィングと必要な事務手続きを済ませて、乗降口へ。目の前の滑走路では離発着が繰り返され、飛び立つ前の低いエンジン音や空を舞うヘリコプターのプロペラ音が鳴り響いていました。
コックピットの計器が光り、プロペラが回転を始めました。耳に届くエンジン音は思ったよりも柔らかく、胸の鼓動がそれに呼応するように高鳴っていくのが感じられます。
座席のバックルを締めながら「思ったより近いんですね、コックピットと座席の距離」「飛行機にはいろんな操作が必要なんですね」などと興味津々にパイロットに話しかけるトンさん。初めて小型機に乗る緊張感よりも期待の方が上回り始めた様子です。
セスナ機に乗るのは初めてですが、こんなに近くで機体を眺めたのも初めて。想像していたより小型だったから、すごくスピードが出そうだし、空中での揺れは大丈夫かなって少し緊張しました。セスナ機の燃料は自動車と同じガソリンだそうで「軽自動車に乗る気軽さで、普段どおり、リラックスして遊覧飛行を楽しんでください」。そうパイロットさんに励まされ、楽しもうって前向きな気持ちになることができました!
空の上で見つけた、大阪のまちの多彩な表情
パイロットがマイク越しに「これから離陸します」と伝えると、ゆっくりと滑走路を走り出したセスナ機が、ふわりと地面から離脱。次の瞬間、窓の外を眺めるトンさんの視界は一気に広がり、八尾のまちの住宅街はみるみるジオラマサイズにまで小さくなりました。遠くに見える大阪都心のビル群は陽光を反射して、とてもきれい。トンさんは手にしていたスマホで“空から見た大阪”を撮影し始めました。
ほどなく機体は南へと旋回。まずはあべのハルカス方面へと向かいます。八尾空港を離陸してわずか3分で地上300メートルほどの高度に到達すると、“西日本一高いビル”はもう目の前に迫る距離です。空と街が映り込んだガラス壁は、まるで大阪のまちの繁栄を示す写し鏡のようでした。
そこから機体は南へ進み、南海電鉄なんば駅の上空へ。 中央付近で凛とした佇まいを見せるのが難波の5つ星ホテル・スイスホテル南海大阪です。なんばパークスやなんばスカイオに沿う形で南海電鉄の線路が伸びているのが見てとれます。乗り物好きのトンさんは思わず「電車が乗り入れるところが見たい!」と身を乗り出しました。
ほどなくして眼下に見えてきたのは大阪城です。
ミニチュアサイズの天守閣がお堀や植林で守られた要塞の全貌も一目瞭然です。
さらに進むと、海の上に広がる「夢洲(ゆめしま)」が見えてきました。つい先日まで大阪・関西万博会場として賑わった人工島です。その中心に、巨大な円を描く「大屋根リング」が浮かぶように佇んでいます。 「すごい、あれが大屋根リングですね!」とトンさんは思わず身を乗り出しました。
普段はバスの運転手をしているトンさん。仕事で何度も夢洲の近くまでお客さんを送り届けていたのに、仕事でもプライベートでもゲートをくぐる機会のないまま、閉幕を迎えてしまったと言います。日常的に関わりのあった場所を上空から見下ろす体験は、トンさんのなかで大きな驚きと感動を呼び起こしたようでした。
そのまま機体は南に旋回し、仁徳天皇陵を中心とする百舌鳥・古市古墳群へ。
地上からだとただの森のように感じられる仁徳天皇陵ですが、上空から眺めると確かに前方後円墳だと分かります。まるで鍵穴のような形をした巨大古墳をじっくりと眺めながら、八尾空港への帰路に着きます。
飛行場が見えてくると機体は徐々に高度を下げ、着陸準備に入りました。約30分のフライトを終えて、トンさんを乗せたセスナ機はゆっくりと八尾空港の滑走路に到着。初めて体験した“空から見る大阪のまち”にすっかり魅了されたトンさん。いかに素晴らしい体験だったかは、その表情がすべて物語ってくれました!
大阪のまちは仕事でもプライベートでもあちこち通い慣れていたのですが、空から見ると印象が全然違いました。観光客はもちろん大阪に住んでいる人にも乗ってほしいです! 私も飛行中もずっと「すごい」「すごい」って口走りながら、夢中でスマホカメラのシャッターを押しまくっていましたよ。大阪・関西万博にも仕事で近くを行き来をしていただけで、遊びに行けず終いで残念だったところ、上空から眺められただけでもよかった、今度は嫁と来て遊覧飛行を楽しみたいと思います!
飛行機好きにはたまらない品揃え。ツアーの余韻で、物欲も急上昇!
遊覧飛行の感動に包まれ、すっかり上機嫌のトンさんと、同じ敷地内にある「エアロラボ パイロットショップ」へ。こちらは航空ファン御用達のスポットとして知られ、店内にはパイロット用の本格的な航空機器や関連グッズのほか、フライトジャケットやキャップ、エンブレムなどのかっこいいアパレルや小物も並び、マニアならずとも物欲が刺激されてしまうほど。古い機体の一部をリメイクした展示品には見て触れることもでき、あちこち見て回るだけでもワクワクします。
ショップの一角に、パイロットや空港で働くスタッフが小腹を満たしにやって来るというイートインスペースを発見。一番人気の「チーズドッグ(500円)」は、ホットドッグパンに大きなソーセージを挟んでとろけるチーズをかけて焼いた、食べごたえのある一品。「おいしい! フライト後はお腹が空きますもんね」とトンさんもぺろりと平らげていました。
八尾空港の近くでもう少し遊ぶ&食べるなら……
作って楽しい食べておいしい・コンペイトウミュージアムやお
八尾空港から車で5分ほどの「コンペイトウミュージアムやお」では、ポルトガルの宣教師が持ち込んだとされる小粒で愛らしい砂糖菓子・金平糖(こんぺいとう)の歴史の勉強や製造工程の見学、カラフルな金平糖づくりを体験(事前申込要)できます。
自分好みの色と味を選んで初めて手作りする金平糖は、きれいな星型をした市販品に比べるとふぞろいになりがちですが、思い入れが加わる分、おいしさはひとしお。食べるたびに八尾空港に足を運んだ楽しい思い出も蘇るはず。
物販コーナーでは、季節や催事に合わせていろんなフレーバーの金平糖を販売。和紙でできた箱入りの商品もあり、お土産にも重宝します。
限られた1杯を求めて行列必至の人気うどん店・たからや
八尾空港付近で人気の「うどんの名店」といえば「たからや」。営業時間が極めて限定的であるため、昼どきに運よく開店されていて空席があればぜひ立ち寄って欲しい1軒です。コシの強いうどんはもちもちと弾力がありますが、のどごしは優しいのが特徴的。出汁の香りが店先まで漂い、開店中はどの時間帯でも常連客と観光客で賑わっています。「温かいおうどん」「冷たいおうどん」「カレーのおうどん」「河内鴨のおうどん」とジャンル分けされたメニューからお好みの1杯を見つけてください。写真は同店自慢のサクサク天ぷらを3種盛り付けた「とりちく玉天ぶっかけ(1,450円)。大きなとり天が一番人気です。
見慣れた風景が特別な景色に変わる! 遊覧飛行の醍醐味
八尾空港から始まった空の旅は、ただの遊覧で終わらない、大阪のまちの鼓動を全身で感じられる貴重なひとときでした。地上では見ることのできない施設や史跡のかたち、空から眺める光のグラデーション、そして人々の暮らしの息づかい。感動体験が詰まったフライトを終えたあとに訪れた八尾のまちもとても魅力的で、出会った人はみな笑顔が温かく、地元で愛されるグルメや施設にも優しい気遣いで溢れていました。空とまち、過去と現在、観光客と地元がつながる場所——そんな八尾で過ごすひとときは、きっとみなさんの心にも優しく残ることでしょう。
Photo:北川暁(Satoru Kitagawa)
Edit:トミモトリエ(Rie Tomimoto)
Direction:人間編集舎
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