大阪の街の魅力は、デイタイムだけにあらず! クラブやミュージックバーでは毎晩、DJやミュージシャンたちが腕前を披露しています。今回は、大阪を拠点にDJとして活動するKISHさんをガイドに迎え、ナイトタイムの音楽シーンを楽しめる9軒を厳選。キタ・ミナミはもちろん、大阪市外の注目スポットまで紹介します!
活気あふれるネオン街、そして深夜まで楽しめる食文化が融合した、眠らない街・大阪。多彩なジャンルのクラブ、ミュージックバーもあり、そこではローカルのDJたちが夜な夜なフロアを揺らしています。彼らは大阪のナイトシーンを盛り上げ、音楽好きの支持を得るだけでなく、日本のカルチャー形成にも大きく貢献してきました。
しかし、観光ガイドをなぞるだけでは、ローカルのリアルなナイトシーンにたどり着くのは難しいもの。そこで今回は、長年にわたり関西のシーンを見つめ、本格的に音楽活動も開始したDJ KISHさんに、「ゲストを連れて行くと必ず喜ばれる」という特別な10軒をエリア別に紹介してもらいます。話題の最新スポットから、地元のクリエイターが集う隠れ家まで、感性を刺激するべニュー(イベントなどが行われる空間)にあなたをお連れします。
Guide
神戸生まれ・神戸育ちで現在は大阪在住。アパレル関連企業に勤務する傍ら、モデルとして活躍。週末の夜はクラブで音楽を楽しむ「フロアの人気者」だったが、約2年前にDJとして活動をスタート。豊富な経験を生かし、アンダーグラウンドなクラブからホテルラウンジまで幅広いシーンにフィットし、月10本以上の出演をこなしている。
キタエリアは、大規模な空間構成と洗練された演出が魅力
梅田を中心としたキタエリアは、大規模開発で更新される街の風景と連動するように、洗練されたムードや、スケール感を持つ施設が目立ちます。国内外から有力アーティストを招く一方、ローカルDJを積極的にブッキングするなど、ベニューごとの方針や楽しみ方が多層的なのもユニークなポイント。人だけでなく、あらゆる音楽が交差するターミナルの様相を呈しています。
いま大阪で聞くべき音・食べるべきフードが揃う「Time Out Market Osaka」
最初に訪れたのは、2025年にオープンした「Time Out Market Osaka(タイムアウトマーケット大阪)」。世界各都市の食とカルチャーを発信するキュレーション型マーケット「Time Out Market」によるアジア初拠点です。梅田の新スポットとして注目されている同店は、大規模な開発が進む「グラングリーン大阪」の南館に位置しています。店内は、関西の名店や名物料理人の一皿をハシゴして楽しめるフードホールとなっています。
ここで味わえるのは、“食い倒れの街”大阪のフードだけではありません。週末を中心に、大阪のミュージシャンやDJがステージに出演しており、カジュアルに食事を楽しみながら、音楽に身を委ねることもできます。
洗練されたインテリアのホールに足を踏み入れると、Time Out誌の編集者が厳選した「いま食べるべき大阪の料理」が迎えてくれます。大阪のソウルフードや、日本の食材と異文化を掛け合わせた創作料理を提供する17のキッチンが、まるでテーマパークのように軒を連ねています。
マーケット内の2カ所に設置されたバーのクオリティも見逃せません。生ビールは、国内外の主要銘柄やクラフトビールまで常時10種類以上を取り揃えるほか、スタンダードから高級品まで幅広いジャパニーズ・ウィスキーをサーブ。経験豊富なバーテンダーによる、大阪をモチーフにしたオリジナルカクテルまで楽しめます。
大阪の人気フードと、街でリアルタイムで流れている音楽を楽しむならここ! 普段音楽系のスポットに行かない人も、バンド演奏やダンスミュージックに気軽に触れられるのがいいですよね。座席もたくさんあるから、「今日はごはんがメイン」「しっかり音楽を聴きたい」のように、目的に合わせてベストポジションを探してみて。
元映画館ならではの大空間と豪華演出! 「PICCADILLY PREMIUM」でパーティーナイトを満喫
続いては、関西最大規模のナイトクラブ「PICCADILLY PREMIUM(ピカデリープレミアム)」へ移動。梅田の市街地にありながら大空間を実現しているのは、ここがかつて映画館だったから。大胆にリノベーションされた空間には、巨大ビジョンや多数の照明が設置され、五感を刺激する演出が繰り広げられます。
営業時間の前半はライブショーを楽しめるシーシャバーとして、後半はクラブとしてオープンします。クラブタイムは、EDMやエレクトロを軸に各国の有名DJをブッキングする一方で、キャッチーなパーティーチューンが流れるイベントも多く、幅広いリスナーを満足させています。
実はPICCADILLY PREMIUMは、KISHさんの“ホームグラウンド”のひとつ。DJブースに立つと、その選曲でフロアに高揚感をもたらしました。
2025年の大規模リニューアルでは、総額3億円の改装費がかけられたことも話題になったPICCADILLY PREMIUM。ゴージャスな内装のうち、手すりや柵は純金箔で仕上げられており、こちらも名物として知られています。
今夜もみんなに楽しんでもらえて良かった! 音響もVJも素晴らしいクラブだから、大阪に来たらぜひ訪れてほしいです。お客さんにフレンドリーなローカルDJが多く出演しているのも、PICCADILLY PREMIUMが愛される理由。「関西人、大阪人はノリがいい」ってよく言われるけど、ここに来たら実感してもらえるはずです。
大阪の音楽シーンに名を残す重要スポット「NOON + CAFE」
梅田の喧騒から一駅ほど離れた中崎町エリアには、昼と夜で表情を変えるカルチャースポットがあります。高架下に構える「NOON + CAFE」は日中はカフェ、夜になるとクラブ、ライブハウスへとスイッチするベニュー。観光や買い物の途中にふらっと立ち寄れる場所でありながら、関西の音楽シーンを長きにわたり支えてきた、重要な舞台でもあります。
音楽イベントは、なんといってもジャンルの幅広さが特徴。DJパーティだけでなく、バンドライブやセッション、ブラス系のイベントなど、曜日や時期によって色とりどりに変化します。高架下というロケーションも相まって、街の空気も楽しめる場所として、大阪の音楽好きに支持されています。
メジャー、インディーズの枠にとらわれず多様なパーティを仕掛けるなど、大阪の音楽シーンを盛り上げてきたのがNOONです。店内の雰囲気も良くて、時間帯を問わずおしゃれな人たちが多いですね。お昼は散歩の途中に休憩スポットとして立ち寄ってみてください。夜のイベントについては、Instagramなどで最新情報をチェックしておくのがおすすめ!
「THE ST. REGIS BAR」では、シックな空間で伝統のジャズとドリンクを
こちらはキタとミナミの中間エリア、本町にある「The St. Regis Bar(セントレジスバー)」。セント レジス ホテル 大阪12階、ロビーの重厚なドアをくぐると、音と会話がしっとりと響くラグジュアリーな空間が広がります。バーカウンターの奥には、屏風絵をモチーフにした壁画が飾られ、金をベースに大阪の歴史や観光名所が描かれています。
物語性のある体験ができるこのバーの魅力で、象徴的なのが「イブニングリチュアル」。夕暮れ時にシャンパンをサーベルで開栓するシャンパン・サーベラージュを行い、夜の始まりを祝います。
実はジャズはセントレジスとは切り離せない音楽。1900年代初頭のジャズ全盛期、セントレジスニューヨークは伝説的なミュージシャンを迎えてきました。その豊かな伝統は現在に至るまで根付き、ここ大阪でも、ライブジャズを通してその文化を体感することができるのです。
セントレジスのシグネチャーカクテルであるブラッディマリー。その大阪版 「ショーグンマリー」 は、柚子・醤油・わさびといった和のスパイスを効かせてアレンジした一杯。旅先ならではの文脈を、味覚で感じることができます。
旅先の夜をシックな雰囲気の中で過ごしたいなら、御堂筋の景色を眺めながら、お酒と音楽を楽しむのもおすすめ。このバーで流れているのは単なるBGMとしてのジャズではありません。セントレジスというブランドが、ニューヨークの記憶を現在につなげるストーリーが感じられます!
金・土曜日、祝前日 17:30〜 24:00(フード L.O. 22:00、L.O. 23:30)
ミナミエリアは、カルチャーの多彩さとエンタメ要素が面白い!
続いてはさらに南下して、心斎橋・難波を中心としたミナミへ。道頓堀が代表するように、大阪らしいネオンと開放感、多様なカルチャーが混在するエリアです。
初めて来たら気づかない!? 秘密基地のようなミュージックバー「AREA51」に潜入!
飲食店やクラブなどが入り交じり、毎夜活況を呈する歓楽街・宗右衛門町。そのすぐ近くに、一見しただけでは気づけないナイトスポットがあるそうで……。「初めてだと分からないと思うから、僕について来て」とKISHさん。
メキシコ料理店の中を進み、奥の扉を開くと……
ネオンのトンネルが! そしてさらに奥へ進むと……
映画の中の秘密基地のような空間が出現! 赤い光に包まれたこの場所こそがミュージックバー「AREA51」です。「安心して音楽を楽しめる、隠れ家のような場にしたい」との思いで、会員制・招待制を原則としていますが、現在は門戸を広げ、当日開催される音楽イベントを目的に訪れた旨をエントランス、つまりメキシコ料理店で伝えると入店できます。その際、公式Instagramなどに掲載されたフライヤーを提示するとスムーズとのこと。
「スピークイージーバーみたいでしょ?」と楽しそうに話すKISHさんは、早速ドリンクをオーダー。すぐに顔なじみのDJ仲間や友人を見つけて乾杯しました。ミュージックバーでありながら、本格的なドリンクを用意しているのも、AREA51のこだわりのひとつです。
ネオンを始めとした装飾だけでなく、店舗中央に設けられたアイランド型のカウンターもAREA51の特徴。DJブースもフラットなので、プレイ中のDJの真横まで行くことができるんです。このほかにも写真映えするスポット満載!
初めての人を連れてくると、国籍を問わず「こんなところに!?」と驚いて、楽しんでくれるスポット。バーなので、おしゃべりができるくらいの音量やバランスに整えられています。音楽はハウスが中心で、お客さんは比較的落ち着いた人が多いですね。そうそう、「入り口」のメキシコ店のフードもおいしいんですよ! 「ここかな?」という所まで来たら、直接メキシコ店の店員さんに話し掛けてみてください(笑)
ミュージックスポットとして存在感を増し続けるラグジュアリー・ライフスタイルホテル「W Osaka」
心斎橋の「W Osaka」は、単なる宿泊施設を超えた、音楽と社交場を組み込んだ滞在拠点です。音楽スポットとしては3階の「LIVING ROOM」がメインで、DJブースと遊び心のある空間設計でゲストを迎えてくれます。バーとダイニングが同じフロアに展開し、昼はアフタヌーンティー、日が沈むと一気にナイトシーンの表情へと切り替わります。
国内外の著名なDJを招いてスペシャルイベントを定期的に開催するほか、ここでもローカルDJが活躍。KISHさんもその一翼を担っています。
ローカルでは、ホテルというより、音楽を聞きに集まる場所として定着しているくらいメジャーなスポットです(笑)LIVING ROOMは、ふらっとやって来て一杯飲むのにも最適。夏は野外デッキも開放されます。僕も定期的にプレイしてるので、タイミングが合えばぜひ!
商業ビル地下のお祭り空間「TANK酒場」はほぼ毎晩イベントを開催!
「買い物のついでに、ローカルなナイトシーンにもちょっと触れたい」という欲張りなコースにもちょうどいいのが、W OSAKAから徒歩圏内の商業施設「心斎橋PARCO」の地下2階にある「TANK酒場/喫茶」。関西の人気店を集めた食のフロアのど真ん中に、DJとイベントを組み込み、カルチャーサイドから盛り上げるスポットです。
旅行者でも入りやすい一方、地元の“おもろい人”が集まる磁場も持っています。それもそのはず、ほぼ毎日、しかもコンセプトの異なるイベントが展開されているんです。DJイベントに限らず、レコード市やグルメイベントなど、広い領域のカルチャーを扱っているのも特徴的。周辺の飲食店との行き来も歓迎しており、思わぬ出会いが生まれるハブとして機能しています。
心斎橋のど真ん中、しかもみんなが買い物や食事をしているビルの地下で毎晩のようにDJが鳴らしているって、改めてすごいですよね。イベントもほぼ毎日で、ふらっと覗くだけでも「今日は何が起きてるんだろう」ってワクワクできます。大阪の酒場のムードや、お祭り好きなキャラクターに触れられる、アイコン的スポットです!
ローカルのクリエイターやDJが集う、ミナミの溜まり場「遖」
難波〜心斎橋の夜遊びを満喫したら、もう一歩ローカルに踏み込んでみてもいいかも。難波から一駅ほど、桜川エリアにある「遖(あっぱれ)」は、酒場でありながら音楽好きが自然に集まるスポットとして知られる一軒です。
遖は、大正時代に建てられた蔵をリノベーションしたバーで、日本酒とナチュールワインを中心に、さまざまなお酒を取り揃えています。DJとしても活動する店主を慕い、音楽関係を始めとするクリエイターが多く訪れるほか、独創的な店構えに惹かれて旅行客が訪れることもしばしば。カジュアルな1階に加え、2階にはカラオケルームを設けています。
店主さんのキャラクターもあって、“濃い”面々が集まる場になっています。ショップと協力してレコードを販売しているのもユニーク! 蔵を改装した空間は、自然のマテリアルが目に入るからか、不思議と落ち着くんですよ。
こだわり満載のミュージックバーは、大阪市外にも!
音楽シーンが活発なのは大阪市内に限ったことではありません。ここでは郊外エリアから、こだわりの詰まったスポットを紹介します。
ライブも本格DJパーティーも。高槻市「Music Bar ACID」
「もっとローカルの距離感で音楽に浸りたい」という旅の後半は、高槻市の「Music Bar ACID」へ。阪急高槻市駅から徒歩数分というアクセスの良さで、バーを主体にしながら、ライブやDJイベントなどジャンルを横断して音楽を楽しめるスポットです。
ACIDのコンセプトは「年齢問わず、気軽にお酒と音楽を楽しめる空間」と明快です。観光客にとっては、クラブの作法を知らなくても楽しめる入り口ですが、仕事帰りに一杯やりながら音楽を楽しむという地元の人が多く、普通なら出会うことのない両者が同居できる空間になっています。
高級ホテルのラウンジから、電車の高架下、そして郊外のアンダーグラウンドまで、バラエティ豊かな大阪のミュージックスポット。そこにさらにDJやアーティストの多様性がまじわって生み出されるグルーヴこそ、この街の最大の魅力です。KISHさんが選んだスポットに一歩踏み入れれば、昼の観光だけでは分からなかった、大阪の“B面”を感じられるかもしれません。
Photo:K2GRAPH
Edit:寺内浩登(Hiroto Terauchi)
Direction:人間編集舎