関西国際空港の程近く、泉佐野市にある「犬鳴山」。都心のイメージが強い大阪府にありながら、渓谷や森林など大自然が広がる神秘的な空間です。そんな犬鳴山を香港出身のグリフィンさんと散策し、伝統ある七宝瀧寺(しっぽうりゅうじ)での祈祷体験や犬鳴山温泉、現地で味わえるご当地グルメなどをご紹介します。
関連ツアー
大阪の犬鳴山トレッキングと護摩祈願体験
- 霊山・犬鳴山の深い静寂の中に佇む七宝瀧寺で、炎に願いを託す神聖な護摩祈祷を体験
- 燃え上がる炎、響き渡る真言、全身を包み込む荘厳な空気。今もなお息づく本物の修行の場で日常では味わえない特別な時間を
- 1300年受け継がれてきた日本の文化に触れる、本物のスピリチュアル体験
大阪府の南部に位置する泉佐野市は、関西国際空港を有するまちとして知られ、国内外からの人やものが集まる日本の玄関口です。また、大阪府内でも有数の漁獲量を誇る「泉佐野漁港」も、市内外から多くの人が訪れる人気スポットとして知られています。
空港や漁港が海辺に集まる一方で、市域の内陸側には大阪府内とは思えないような豊かな自然の風景が広がっています。今回訪れた「犬鳴山(いぬなきさん)」は、そんな泉佐野の自然を満喫できる地であると同時に、修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)が開いた霊場として知られています。
現在も多くの修験者が訪れ、日本国内でも珍しい女性も修行できる行場(ぎょうば)※として信仰されています。古くから山そのものがご神体とされ、歩いているだけでも神秘的なオーラを感じ取れます。
※行場:修験者(しゅげんじゃ)が修行を行うための、特定の場所。
渓谷を包む原生林や、いくつもの滝に囲まれた犬鳴山には、修験道の本拠「犬鳴山 七宝瀧寺」があり、祈りと修行の場として1300余年もの歴史を刻んでいます。さらに山の麓には「犬鳴山温泉」があり、心身を癒やす湯処として多くの人々に親しまれてきました。
今回は紅葉が残る初冬の犬鳴山エリアを巡り、参道を抜けて七宝瀧寺を参拝。旅の締めくくりには、歴史ある地元旅館の「犬鳴山温泉 不動口館」で温泉と地元グルメを満喫します。
Guide
兵庫県在住/香港出身
日本人との結婚を機に来日しCAとして勤務。現在、モデルや通訳としても活動中。
趣味はバレーボール、絵、旅行。生きている間に日本全国を旅するのが夢。
乗り場は駅からすぐ。 バスに揺られて、いざ「犬鳴山」へ
犬鳴山へは、泉佐野駅から「南海ウイングバス」犬鳴線で行くことができます。泉佐野駅東口を出てすぐのバス停に乗車できるので、土地勘がなくても迷いにくいのが観光に嬉しいポイントです。バスは1時間に1本程度の運行なので、出発前に時刻表をチェックしておきましょう。今回は、平日朝の9時10分発のバスに乗車しました。
山全体がパワースポット! 豊かな自然を満喫できる修験道発祥の霊山でご利益を
古くから修験道の霊場として知られてきた犬鳴山は、七宝瀧寺を中心に山全体が霊山(神仏が祀られている神聖な山)として信仰されている神聖なスポットです。「修験道発祥の霊山」とも言われる通り、その歴史は古く「修験道の開祖」である役行者が西暦661年に開基(かいき)したと伝えられています。
また、犬鳴山では空海(くうかい)※も修行を重ね、「山内に点在する七つの滝それぞれに七福神をお祀りした」という伝承も残されています。そのため「七宝瀧寺を参詣すると、不動明王と七福神すべての加護が一度で得られる」と言われていて、全国から訪れる参拝客が後をたたないのだとか。
※空海:真言宗の開祖として知られる、平安時代初期の僧。空海の死後に醍醐天皇から与えられた称号である「弘法大師」の名でも有名。
それでは、七宝瀧寺を目指していざ山道へ!
七宝瀧寺へ続く山中は、点在する滝や大きなヒノキなど、美しい自然の景観が続きます。この神秘的な森林は「大阪みどりの百選」にも選出されていて、この日もトレッキングを楽しむ観光客の方々と何度もすれ違いました。
「香港の人たちも、トレッキングが大好きなんですよ」とグリフィンさん。香港というと、ネオン看板が輝く繁華街のイメージがありますが、実は総面積の40%以上を国立公園や自然保護区が占める緑豊かなロケーションなんだそうです。
山中には、たくさんの史跡が点在しています。グリフィンさんは何度も足を止めて、お地蔵さまや犬鳴山の歴史を語る石板を興味津々に眺めていました。
山中にあった立て看板によると、犬鳴山の名は猟師と義犬の伝説に由来しているそう。西暦890年頃、猟師が鹿を狙っていたところ、飼い犬が激しく吠え続けて獲物を逃し、怒った猟師は犬の首をはねてしまいます。しかし、すぐそばに大蛇が潜んでおり、犬が主人を守ろうとしていたことに気づいた猟師は猛省して僧となり、生涯犬の冥福を祈り続けたといわれています。
この話を聞いた宇多天皇が義犬の忠義に心を打たれ、地名を「犬鳴山」と改めるよう勅命を出したと伝えられています。
すこし悲しい犬鳴山の由来に驚きつつも、参道を進むと目を引く朱色の「瑞龍門(ずいりゅうもん)」が! 非日常的な雰囲気を感じつつ、門をくぐって七宝瀧寺を目指します。
大阪市内からすぐ近くに、こんな大自然があるなんて! 日本を訪れる香港人はリピーターが多いので、「都会は前に行ったから、今度は日本の穴場に行きたい」という人にぜひおすすめしてあげたいです!
厄除け観音、不動明王、行者の瀧……七宝瀧寺でご利益スポット巡り
山中を歩き進めること30〜40分ほど。いよいよ「七宝瀧寺」に到着! まずはじめに「厄除け十一面観世音菩薩(じゅういちめんかんのんぼさつ)」を安置しているお堂を参拝します。弘法大師がつくった頭の上に11の顔がある観音様は、全方向を見守る厄除の御利益のある仏として、古くより信仰されています。以前は10年に一度しか拝観することができなかったそうですが、現在は毎年4月に行われる「厄除十一面観世音菩薩供養法要」で、神々しい姿に出会うことができます。
本堂の方に歩みを進めると、巨大な不動明王がお出迎え! 全長8メートルもあるんだそう。青銅製としては日本で一番の大きさで、実際に像を目の前にしてみると、その迫力はかなりのものです。
こちらの赤い建物は、七宝瀧寺の境内にある「清瀧堂(せいりゅうどう)」。修験道の修行体験の受付や集合場所、休憩所として使われていて、犬鳴山の緑に映える美しい朱色が、神秘的な雰囲気を醸し出しています。
七宝瀧寺の本堂から少し歩くと、「行者の瀧」があらわれます。実は七宝瀧寺は日本でも数少ない「一日修行体験」ができる霊山で、ここ行者の瀧で「瀧修行体験」もできるんです! 女性の立ち入りが禁止されている霊山も多い中、男女を問わず修行を体験することができるため「女人大峯」とも呼ばれています。事前予約をすれば国籍・性別を問わず誰でも参加することができる※ため、近年では外国人旅行客からも人気を集めているんだとか。
※年齢制限あり。
受入可能期間:3月第1日曜日、4月~11月第3日曜日(要予約)
※12月から2月は実施なし。
参加費:8,000円(滝行衣の貸出料金を含む)申込み方法:10日前までにオフィシャルサイトにてお申し込み。
オフィシャルサイト
※不明な点は、犬鳴山七宝瀧寺本堂(072-459-7101)まで要連絡。
※定員に達した時点で締め切り。
※参加当日はサンダルや短パン・スカートなどの着用不可。
燃え上がる炎に願いを託す。七宝瀧寺の本堂で「護摩祈祷(ごまきとう)」を体験
緑豊かな参道や厳かな滝など、見どころが多い七宝瀧寺の本堂では、特別な祈祷儀式「護摩祈祷(ごまきとう)」を体験することもできます。
護摩祈祷とは仏教の密教にルーツを持つ儀式で、本尊・倶利伽羅不動明王(くりからふどうみょうおう)の御宝前の「護摩壇(ごまだん)」(火を焚くための祭壇)で「護摩木(ごまぎ)」と呼ばれる願い事を書いた木片を炎の中で焚き上げます。護摩とは梵語で「焚く」という意味で、火は地上のすべてのものを焼きつくしてしまうことから、欲望や魂の汚れをなくす神聖なものだと言われています。
今回、護摩祈祷をしてくださった僧侶のファーリー康樫(こうけん)さんは、なんとアメリカ・オハイオ州のご出身! 仕事で日本に来たことをきっかけに、日本仏教へ関心を持ち始めたそうです。2020年から仏教の勉強と修行を始め、その後資格を得て、2023年から僧侶として七宝瀧寺に奉職されています。
「最近は『日本の宗教を学びたい』という海外の来訪者も増えています。私も、最初に仏教に触れた際は海外と日本の宗教感の違いが飲み込めずに戸惑いましたが、いろんな国の人に仏教の面白さや素晴らしさを理解してもらえたらうれしいです」と話すファーリー康樫さん。英語と日本語の両方で対応できるバイリンガルなので、言葉の壁を感じやすい海外の参拝者の方にも、仏教や護摩についてわかりやすく解説してくれます。
護摩祈祷はただお経を唱えるだけでなく、護摩木をくべた炎を使うのが特徴的な祈祷です。
まず、木を組み合わせて台を作り、そこに仏さまの座る場所を用意します。そのあと、護摩木を火の中で燃やすことで、人々の願いを不動明王に届ける儀式が行われます。
祈祷中に米や五穀、お香、花などさまざまな供物を火中に投じて焚き上げることで、「仏さまに元気になっていただく栄養をお供えし、その力の一部をこちらに分けていただく」というイメージを祈りにこめる、と説明してくださいました。
七宝瀧寺では一年365日、いつでも護摩祈祷を申し込めます。家内安全や商売繁盛、良縁祈願など、さまざまなお願いに合わせて祈りを捧げてもらえるので、ぜひ一度本格的な祈祷を体験してみてください。滝行を含めた「一日修行体験」と同日に祈祷に参加することもできるので、ご希望の方は体験申込時に忘れずに伝えましょう。
また七宝瀧寺では、海外から訪れる旅行者の多様な食文化や食習慣に対応し、誰もが安心して食事を楽しめる環境づくりを目指しています。今後は「一日修行体験」「護摩祈祷」にお申し込みいただいた方を対象に、MIRA-Dashi®※を使用したプラントベースの弁当を提供する予定もあるのだとか。七宝瀧寺の写経室などでご提供予定です。
※MIRA-Dashi®:泉佐野市を拠点とする不二製油株式会社が開発した、ダシのように使える植物性の風味素材。
また、本堂では授与品やオリジナルグッズなどを購入することができます。犬鳴山限定のお守りをはじめ、犬鳴山の由来となった義犬モチーフがプリントされたオリジナルタンブラーや、泉州地域名産の泉州タオルなどがゲットできるので、お帰りの際はお土産のチェックも忘れずに!
自然いっぱいの山の風景から、雰囲気が一変する本堂での護摩祈祷には少し緊張……! でも、真言を聞きながら炎を見つめているうちに、不思議と気持ちが落ち着ちました。不動明王さまに願いが届きますように!
犬鳴山の絶景を眺めながら、温泉と「犬鳴ポーク」を満喫!
犬鳴山と七宝瀧寺の散策を終え、時刻はすっかりお昼どき。旅の締めくくりは、温泉宿にて日帰り入浴と名物「犬鳴ポーク」を堪能します!
ということで、バス停のすぐそばにある「犬鳴山温泉 不動口館」にやってきました。こちらは1932年創業の歴史ある老舗温泉旅館です。実は犬鳴山は大阪府内唯一の温泉郷としても有名で、関西国際空港が開港してからは「世界に一番近い温泉」とも呼ばれているんだとか。
「香港では湯船につかる習慣がないので、銭湯や温泉みたいに、お風呂を楽しむ施設は一般的ではないんです」とグリフィンさん。全国各地に温泉があり、日常的に銭湯を訪れる日本の習慣は、とても特別な体験に感じるそう。
不動口館の大浴場からは犬鳴山の自然を望むことができ、川の流れる音を聞きながらゆったり温泉に浸かることができます。トレッキングの疲れも一気に吹き飛びそうです。
入浴の後は、お部屋でほっと一休み。窓辺からは、犬鳴山の自然を望むことができます。今回はちらほらと紅葉が残る12月に訪れましたが、春はうぐいすやカジカガエルの鳴き声に桜、夏にはセミの声に新緑、冬は冷たく澄んだ空気と、四季によってさまざまな自然の表情を楽しめるのが、犬鳴山観光の魅力です。
お風呂で癒やされ、部屋でくつろいだ後はいよいよおまちかねのランチタイム。今回いただくのは、泉州地域のブランド豚「犬鳴ポーク」の味噌鍋です。
自家配合した飼料を与え、他の豚より長い飼育期間を経て出荷される犬鳴ポークは、甘みと旨みがしっかり感じられつつもあっさりした肉質で、自然にお箸が進みます。大阪府下でもなかなか出回らないご当地食材を味わえるのは、市街地から少し離れた場所ならではの魅力です。
山の中で見る自然と、お宿から眺める自然はまた違った雰囲気でとっても癒やされます。広東料理でも豚肉はよく使われるので、「犬鳴ポーク」は香港の人にもぜひ食べてみてほしい! お土産コーナーでは、地元の食材を使った食品が気になりました。
自然、スピリチュアル、グルメを半日で満喫できる犬鳴山の日帰り散策
四季を感じられる山間の景観に、歴史を感じられるお寺や温泉など、日本の魅力をぎゅっと詰め込んだような犬鳴山。半日かけてじっくり散策したグリフィンさんは「関西に長く住んでいるから地名は聞いたことがあったけれど、こんなにリフレッシュできる場所とは知りませんでした! 香港の友人にも教えてあげたいです」と話してくれました。犬鳴山エリアまでは大阪市内から公共交通機関だけでもアクセスでき、関西国際空港からは1時間未満で訪れることができます。自然、スピリチュアル、グルメがそろうパワースポットで、すてきなリトリート旅を満喫してみてくださいね。
Photo:高津祐次(Yuji Takatsu)
Edit:高津祐次(Yuji Takatsu)
Direction:人間編集舎
関連ツアー
大阪の犬鳴山トレッキングと護摩祈願体験
- 霊山・犬鳴山の深い静寂の中に佇む七宝瀧寺で、炎に願いを託す神聖な護摩祈祷を体験
- 燃え上がる炎、響き渡る真言、全身を包み込む荘厳な空気。今もなお息づく本物の修行の場で日常では味わえない特別な時間を
- 1300年受け継がれてきた日本の文化に触れる、本物のスピリチュアル体験