日本最大級の環濠集落「池上曽根遺跡」が、過去への玄関口。泉大津市で知る日本の古代ロマン・弥生文化の魅力

泉大津市と和泉市に広がる日本最大級の環濠集落(かんごうしゅうらく)「池上曽根遺跡(いけがみそねいせき)」の発見から約120年。発掘調査を通じてその歴史的価値が広く知られ、両市は弥生時代の暮らしや文化を感じられる街として注目されています。今回は、古代を愛する陶芸家・渡部彩弥さんと泉大津市を訪ねました。

池上曽根遺跡

大阪市内から電車で約20分、大阪の南部に位置する泉大津市は、日本で農耕社会が始まった「弥生時代(約2500〜1900年前)」の歴史と伝統産業が息づく街です。例えば、日本最大級の環濠集落・池上曽根遺跡。弥生時代の人々が約500年に亘って暮らしたとされるこの集落では、発掘調査をもとに復元された住居などから、当時の息吹を肌で感じることができます。

また、西北部は大阪湾に面しており、豊かな海の恵みがあります。古くは綿作地として栄え、織物産業が発展。そして、忘れてはならないのが毛布産業。泉大津市は日本で初めて毛布が産業として発展し、日本一の生産規模を誇るまでに成長しました。漁師町の活気と職人魂が共存する独自の文化が、この街で培われてきたのです。

そんなさまざまな魅力が溢れる泉大津市を、縄文時代(今からおよそ1万3,000〜1万5,000年前に始まり、約1万年以上続いた狩猟採集の時代)をテーマに作品を生み出す陶芸家、渡部さんに案内してもらいました。

Guide

渡部彩弥

堺市出身。スケボーに乗る遮光器土偶や、カラフルな釉薬の彩りをまとった火焔土器など、縄文時代の土器を独自の解釈で作品に昇華する陶芸家。実は高校時代、池上曽根遺跡の近くが通学路だったそう。

国内最大級の弥生時代の集落跡「池上曽根(いけがみそね)史跡公園」を訪ねる

池上曽根史跡公園
奥は復元された「大型掘立柱建物(おおがたほったてばしらたてもの)」、手前は「掘立柱建物」。

まずは渡部さんが高校生の頃に近くを通って通学していた、日本最大級の環濠集落・池上曽根遺跡へ。泉大津市曽根町と和泉市池上町に広がる遺跡全体の範囲は、南北約1,500m、東西600mに広がる広大な環濠集落(環濠で囲まれたムラ)ということがわかっています。
池上曽根遺跡が発見されたのは、1903年に池上町(和泉市)在住の南繁則さんが自宅の土塀に埋まっていた遺物の断片を発見し、不思議に思って調べたことがきっかけだったそう。 その後、府立泉大津高校地歴部や、第二阪和国道内遺跡調査会による発掘調査で、大集落が存在していたことが明らかに。そして1976年には、近畿地方でも大規模を誇る集落であることから、国史跡へと指定されました。
「この壮大な歴史が顕になるきっかけが、ひとりの好奇心だったというのがロマンですね」と渡部さん。

池上曽根史跡公園

池上曽根遺跡には、「大型掘立柱建物(いずみの高殿)」と「大型くり抜き井戸(やよいの大井戸)」「掘立柱建物」「竪穴住居(たてあなじゅうきょ)」の建物と井戸が復元されています。「当時の住居を目で見て手で触って体感できるってすごいですよね」と、興味津々の渡部さん。この集落の中心にある「大型掘立柱建物(いずみの高殿)」にはクスノキでつくられた「大型くり抜き井戸(やよいの大井戸)」が隣接していたことが判明しています。

やよいの大井戸
興味津々で「やよいの大井戸」を覗きこむ渡部さん。

クスノキは樟脳(しょうのう)として知られるニオイの強い樹木のため、飲料用の井戸ではなかったと考察されているそう。弥生時代の人々は、クスノキが悪いものを浄化する力を持っていると捉え、この井戸で水を清め、隣接する「大型掘立柱建物」で儀礼や祭事をしていたのではないか?と、考えられています。

大型掘立柱建物
「大型掘立柱建物」の側面に描かれたかわいい線画は、資料をもとに池上曽根の人々の当時の暮らしや四季を描いているものだそうです。
大型掘立柱建物
細部にまで描かれた線画は縄文時代とはまた違うテイストでついつい見入ってしまいます。
大型掘立柱建物
「大型掘立柱建物」の屋根には鳥の姿が!「今まで気づきませんでした」と渡部さん。

学生時代から何度も見ていた建物だったけど、泉大津市教育委員会の方から改めてお話を聞いたことでたくさんの発見がありました。例えば屋根の上の鳥。実際に遺跡から発見されたもので、稲作が始まった弥生時代において田んぼに鳥形木製品をさすことで、水鳥を呼びこみ狩猟をしていたという説もあるそうです。カカシの反対の発想だなんておもしろいですね。

池上曽根史跡公園
住所:大阪府和泉市池上町4-14-13
Google Map
営業時間:24時間開放
電話番号:0725-45-5544(池上曽根弥生情報館)

日本唯一の弥生時代専門の博物館「大阪府立弥生文化博物館」で学ぶ

大阪府立弥生文化博物館

続いて訪れたのは、弥生文化すべてを対象に情報収集・保管・展示・研究をしている「大阪府立弥生文化博物館」。日本で唯一の「弥生文化」を専門とした歴史博物館として、地域の住民だけでなく、全国から研究者がやってくる貴重な施設。最近では海外からの来場者も少しずつ増えているそう。

展示室入口
展示室入口のトンネルを通り、弥生時代へタイムスリップ!
大阪府立弥生文化博物館の第一展示室

第一展示室へ足を踏み入れると、そこには弥生人の暮らしがわかる、竪穴住居が……! 家の造りだけでなく、食器や当時の衣装である貫頭衣、手を使って食べる食事の様子など、『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)※』を始めとした史料をもとに、わかっていることが再現されています。なんと中央奥にいる犬も、発掘調査で見つかった資料をもとに再現された弥生犬なんだそうです。

※魏志倭人伝:3世紀頃、中国で記された、古代日本や女王卑弥呼に関する貴重な記録。

大阪府立弥生文化博物館の第一展示室

日本全国で出土した遺物やこれまでの研究をもとに、弥生文化を紹介する第一展示室。大陸から九州へ渡ってきた人たちが、どのように日本各地へ広がっていったのかを学ぶことができます。「狩猟採集の平和な社会から、農耕社会へ移り行く中でクニができ、領土の奪い合いが始まったのは、良くも悪くも大きな変化ですよね」と、渡部さん。

学芸員さんから説明を聞く渡部さん
学芸員さんから、青銅や鉄で道具をつくる技術について解説してもらいました。
ジオラマ
水田で米づくりが始まった弥生時代。春と秋の稲作の様子をジオラマで鑑賞。こちらは収穫が進む秋の水田。
模型
第一展示室には、『魏志倭人伝』にある記載などをもとにつくられた、「卑弥呼の館」の模型も見られる。探せば卑弥呼の姿も!?
人面付土器
表情がかわいい弥生時代中期の「人面付土器(じんめんつきどき)」。縄文時代の人面付土器はもっと立体的なものが多く、弥生時代のものはシンプルなイメージですね。
展示物

第一展示室を歩き進めると、弥生時代の終末期、2世紀後半から3世紀前半に邪馬台国の女王であったとされる卑弥呼の姿が!この鮮やかな衣装は、中国や日本の専門家の指導のもと「大阪府立弥生文化博物館」が復元した衣装。手には、魏の皇帝から卑弥呼へ贈られたとされる銅鏡を、現代の技法で復元したものを掲げています。

卑弥呼の衣装を着て写真撮影する様子

ちなみに館内では、卑弥呼の衣装を着て写真撮影が可能。渡部さんも、卑弥呼になりきって像と同じポーズで記念撮影!

展示物を鑑賞する渡部さん

第二展示室では、池上曽根遺跡の数々の出土品を展示。遺跡から見つかった土器や石器が展示され、発掘調査の過程を紐解く解説も。普段は縄文時代が専門の渡部さんも「一見、縄文土器よりもシンプルに見えるけど、細かい紋様は文化の発展を感じますね」と、興味が尽きない様子。

展示物
弥生時代を通して、土器の形やデザインがどのように変わっていったかを学べるこの展示が、渡部さん一番のお気に入り。
土器の紋様
弥生時代中期の装飾だそうですが、この紋様は渡部さんも陶芸作品に取り込むことがあるそう。
出土品
館内には実際に触れられる出土品も! 約2,000年前のものに触れられるなんて感無量。

「大阪府立弥生文化博物館」は常設展だけでなく、年に1回開催される特別展と、年に2〜3回開催される企画展も人気。また、月に1回ほど講演会を行なっているので、そのタイミングで足を運ぶのもおすすめです。

弥生文化が中国や朝鮮半島から入ってきたことは知っていましたが、地域によって文化が全く違うことを今回初めて知りました。学べば学ぶほどにおもしろい弥生文化!創作意欲がどんどん湧いてきます。

大阪府立弥生文化博物館
住所:大阪府和泉市池上町4-8-27
Google Map
営業時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
定休日:月曜日(祝日は開館)、祝日の翌日(土・日・祝は除く)
電話番号:0725-46-2162

弥生時代の暮らしや技術を実際に体験しよう! 「泉大津市立池上曽根弥生学習館」

泉大津市立池上曽根弥生学習館

弥生文化の変遷を学んだあとは、「泉大津市立池上曽根弥生学習館」に到着!渡部さんも来るのは初めてだそうで、「学習ということは解説パネルがたくさんなのかと思っていたら、自分の五感を使って楽しめる施設と聞いて楽しみにしていました」とワクワクの様子。

池上曽根遺跡の発掘現場

まず見て欲しいのが、ガラスの床下に見える、池上曽根遺跡の発掘現場。「大型掘立柱建物」と「大型くり抜き井戸」が見つかった当時の発掘現場を再現し、出土したままの姿で展示しています。

池上曽根遺跡の発掘現場

「発掘現場の上を歩けるなんて、なんだか不思議な気分〜!」と、渡部さんも大興奮。発掘現場で行なわれた実際の調査手順を知ることができるんです。そして館内には、壁にいくつもの引き出しが隠された「ガイダンスルーム」が。壁の引き出しをおそるおそる開けてみると、音楽が鳴ったり、出土品に触れたり、弥生時代の動物の骨を見ることができたりと、さまざまな仕掛けが。

ガイダンスルーム

「体験することを大切にしていて、わざと展示物を隠しているのが楽しいですね」と、渡部さんも色々な引き出しを開けて楽しんでいました。「能動的に展示物に出合い楽しむことで、子どもも大人も弥生文化への関心が高まりそうですね」。

展示物

今ではなかなか手に入らない国産ヒスイの勾玉と、鏡づくり体験

ワークショップ

忘れてはならないのは「池上曽根弥生学習館」でしかできないワークショップ。弥生時代を体感できるアクティビティとして「いつでも・だれでも」予約なしで受講することができるワークショップが用意されています。

一方で、内容や工程がより本格的な体験については、事前予約制のワークショップも実施されています。今回体験したのは、スペシャルワークショップの「〜MIGAKU〜 勾玉と鏡の製作体験」(こちらは、実施日の3日前までに要予約)。弥生時代の権力の象徴でもあった勾玉と鏡を実際に作成できる特別企画です。勾玉はなんと、新潟県糸魚川(いといがわ)市で拾い集めた本物のヒスイ。貴重なヒスイを自分で磨き、オリジナルの勾玉をつくるなんて、なかなかないチャンスです。

ワークショップの様子
粗さの違う紙やすりを数種使ってヒスイを磨いていく。
ワークショップの様子
透明度が増しツルツルになったら、勾玉のできあがり。
ワークショップの様子
続いて、鋳造してつくる鏡づくり。「三角縁神獣鏡(さんかくぶちしんじゅうきょう)」など、当時使われていたとされる4種の鏡のデザインから、好きなデザインを選び、鋳造していく。
ワークショップの様子
溶かした合金を流し込み……。
ワークショップの様子
冷ましたら、パカっとオープン。さて、うまくできたでしょうか……!?
ワークショップの様子
ちょっと穴が残ってしまったけれど、きれいな鏡が!
ワークショップの様子
左は見本の鏡。右は渡部さんが手がけたもの。このあと裏を紙やすりで磨き、きれいに映る鏡に仕上げていく。

他にも「アトリエ」では、弥生土器づくりや、土笛づくり、麻糸を使ったコースター・ブレスレットづくりなど、全部で6種類の体験が常時スタンバイ。友人や家族と一緒はもちろん、一人でも弥生文化体験を制覇するために通いたくなりそうです。

一番感動したのは、発掘現場の再現した上をガラスの床越しに歩いたこと。歴史的な現場の上を歩けるというのは、なかなかない機会です。ワークショップの勾玉づくりは今回参加したヒスイのものだけでなく、簡易的な勾玉づくりもできるそうなので、子どもと一緒に体験するのもおすすめですね。弥生時代の紋様が描かれた貫頭衣なども着られるので、思い出になること間違いなし。

泉大津市立池上曽根弥生学習館 
住所:大阪府泉大津市千原町2-12-45
Google Map
営業時間:10:00~17:00(入館は16:30まで、体験受付は16:00まで)
定休日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)/年末年始
電話番号:0725-20-1841

弥生時代からの信仰の地とも言われる「曽禰神社」

曽禰神社

そろそろ泉大津市巡りも後半に。弥生文化をたっぷり堪能したあとは、渡部さんが高校時代から存在は知っていたものの、初めて入るという「曽禰神社(そねじんじゃ)」へ。物部氏の祖先を祖神とするこの神社、小さいながらも、樹齢推定500年といわれる立派なクスノキや、縁結びの木と呼ばれるナギの木など、自然の美しさと力を感じる神社です。

継体天皇の頃の創建と推測されており、「池上曽根史跡の中にありますし、祈りの場所として古代から大切にされている場所なのかもしれませんね」と、渡部さん。

曽禰神社
歴史が残るこの土地に感謝を込めて参拝。
ナギの葉
境内に生えるナギの木。繊維が強く切れにくいことから、縁を結ぶ葉として古くから愛されてきたそう。
曽禰神社 
住所:大阪府泉大津市曽根町1-4-12
Google Map
営業時間:参拝は24時間可能
定休日:なし
電話番号:0725-21-8282

こだわりの手打ち蕎麦と新鮮な海鮮料理「そば草香(くさか)」

そば草香

最後は地域の人が足繁く通う「そば草香」へ。鮮度にこだわった店主さんが、開店前に挽き立ての粉を使って手打ちした香り高い蕎麦と、豊富な海鮮メニューが人気です。大通りから見える大きな扉の印象が強く、渡部さんも前々から気になっていたのだとか。

そば草香の内観
海鮮丼セット
海鮮丼セット(2,300円)。マグロ、カンパチ、鯛、釜揚げしらすが乗った海鮮丼と、蕎麦切り(または、かけ蕎麦)、蕎麦煎餅がセットに。
渡部さんが食事する様子
みずみずしいお蕎麦は、蕎麦の香りが口一杯に広がり、喉越しも良くてツルツルと食べちゃいました。

店主さんは、もともと魚料理を主軸にした割烹で修行を積んだそう。その後、同割烹の別館で手がけられる蕎麦の美味しさに目覚め、店長を務めながら、蕎麦打ちの経験を積み独立しました。「蕎麦好きはお酒好きが多いので、魚とお酒を楽しんだあとに、〆で蕎麦を味わって欲しい」と、店内には約15種類の日本酒が。そして蕎麦焼酎はもちろん、蕎麦粉でつくったウイスキーまで!

新鮮なお蕎麦と海鮮丼という贅沢な組み合わせに、お腹も心も満たされました。高校生の頃は機会がなかったけど、大人になったからこその贅沢ができました。カラッと揚がった蕎麦煎餅も、お酒のアテにぴったりだし、天使の海老を使った「天使の天麩羅セット」も美味しそうなので、今度改めて訪れたいです。

そば草香
住所:大阪府泉大津市東豊中町2-2-14
Google Map
営業時間:平日 11:30-14:00 L.O./18:00-21:00 L.O.
土曜・日曜・祝日 11:30-14:30 L.O./17:00-21:00 L.O.
定休日:月曜の夜の部/火曜日
電話番号:0725-24-8576

弥生文化の壮大な歴史で、自分の人生にも想いを馳せる

大阪府立弥生文化博物館

弥生文化にどっぷり浸かった泉大津市の散策は、いかがでしたか? こんなに何千年も前の歴史を身近に感じる散策は、そうそう味わえないはず。
約2,000年前にこの地に本当に築かれていた建物や使われていた土器を、目で見て手で触れ体験すると、突然タイムスリップして過去と繋がったような不思議な気持ちに。長い歴史の地続きに自分の人生があることを実感し、自分が壮大なヒストリーの一部であると感じずにはいられません。
遥か彼方の出来事に、出合い驚き、新たな好奇心が芽生える。そんな特別な体験へ誘ってくれる泉大津市へ、みなさんぜひいらしてください。

Text:小島知世(Tomoyo Kojima)
Photo:高津祐次(Yuji Takatsu)
Edit:高津祐次(Yuji Takatsu)
Direction:人間編集舎

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