2024年10月に経済産業大臣の「伝統的工芸品」に指定された、和泉市の「いずみガラス」。近世ヨーロッパから持ち込まれたガラス製造技術が、明治時代には和泉市に伝わり、工芸品として定着。今回は「佐竹ガラス」を訪れ、柄入りのガラス玉である蜻蛉玉の制作体験をします。ガラス玉を素材とした人造真珠の買い物スポットも訪れます。
関連ツアー
大阪:老舗ガラス工房の見学とガラス玉のネックレス作り&神社でのご祈祷体験
- 老舗ガラス工房「佐竹ガラス」でガラス細工の素材となるガラス棒製造の見学と体験
- ガラス棒を火にかけて溶かして作るオリジナルのガラス玉作り。
- 市指定天然記念物「千枝の楠」が圧巻の信太森神社でお祈りとお祓い体験。
和泉市のガラス製造技術は、戦国時代にポルトガルの宣教師フランシスコ・ザビエルが伝えた技術にルーツを持つといわれています。そんな長い歴史を持つ「いずみガラス」は2024年10月、経済産業省から伝統的工芸品に指定されました。融点が低くなるように原料を配合した軟質ガラスなので、バーナーでガラスを溶かして成形する「ランプワーク」での加工が可能です。独特の丸みがあり、温かみを感じられる仕上がりになります。
また、ガラス技術から派生した人造真珠「いずみパール」も世界的な評価を受けています。古くはガラス玉に塗装を施して製造されていましたが、時代とともに使用される素材は多様になりました。現在も、国内のアクセサリーパールの製造事業者の7割ほどが、和泉市内にあるといわれています。
そんな伝統の技が今も息づく和泉市には、ガラスの加工体験ができる工場があるだけでなく、歴史・文化を感じられる名所が点在します。しかも、大阪・天王寺から電車で約20分と好アクセス。歩いて巡ることも可能なプチトリップを、中国出身の廖さんと体験します。
Guide
信太森葛葉稲荷神社を訪れ、「安倍晴明の母」の伝説に思いをはせる
旅のスタート地点はJR北信太駅。天王寺駅発の阪和線に乗り、約20分で到着します。今回は北信太から隣のJR信太山駅まで、一駅区間の周辺スポットを散策します。まずは、駅から5分ほど歩き、霊験あらたかなパワースポットを目指しました。
駅からすぐのパワースポット、信太森神社には狐にちなんだお守りも
最初に訪れた「信太森葛葉稲荷神社(しのだのもり くずのは いなりじんじゃ) ※」は708年創建とされ、「安倍晴明の母親の里」として知られています。その由来の「葛の葉伝説」は、安倍保名と葛の葉姫の悲恋の物語。現在も、歌舞伎や文楽の題材として語り継がれています。
※正式名称:信太森神社
信太の森の稲荷を参拝していた保名という青年はある日、狩人に追われた白狐を救います。やがて「葛の葉」と名乗る女性と夫婦となり、男児が生まれます。しかし、息子が5歳になった頃の秋、妻の正体がかつて助けた狐であったことが明らかに。葛の葉は和歌を残して去り、森の葛の葉が嘆くようにざわめいた——という言い伝えです。そして、その子が後の陰陽師・安倍晴明といわれているのです。
御本殿の左側にある樹齢2,000年といわれるクスノキは、1本の幹が二手に分かれていることから「夫婦楠(めおとぐす)」、また枝が四方に伸び生い茂っていることから「千枝(ちえ)の楠」と呼ばれており、良縁成就や夫婦円満、学業成就のご利益があるといわれています。柵などがなく、手で触れられるのも珍しいポイントです。
社務所では、ユニークなお守りを頒布しています。特に海外からの参拝客に人気なのが、葛の葉伝説にちなんだ「勾玉きつね」。白狐をかたどった勾玉と、色の異なる蜻蛉玉(とんぼだま)の組み合わせが美しいお守りで、この後に訪れる「佐竹ガラス」との協働で生まれました。
歴史を感じられるご神木に、直接触れることができるなんて感動しました! 駅の近くにあるのに、広くて静かな雰囲気なのも素敵ですね。白狐の伝説にちなんだお守りは、海外からの参拝客にも人気が出そう。アジアから訪れる人が増えているそうで、歴史や物語が好きな人の心をつかんでいるんだろうな、と思いました。
高品質な「いずみパール」や「いずみガラス」を気軽に買える穴場! 地元の組合が営むショップ兼ギャラリーへ
お参りの後は、信太森葛葉稲荷神社から徒歩約7分、日本人造真珠硝子細貨工業組合による直販・展示施設「izumi pearl & glass Gallery」へ。
この組合は、いずみパールといずみガラスに関わる職人・事業所が所属する組織です。技術継承や業界の発展を目的に活動しており、現在は和泉市などに拠点を置く19事業所が参画。いずみガラスが伝統的工芸品に指定されたのを契機に、国内外への発信にさらに力を入れています。
いずみパールは、ガラス玉と「パールエッセンス」という塗料でつくった人造真珠として始まりました。その品質の高さから、国内外で人気を集め、現在も多くのファッションブランドやジュエリーブランドが使用しています。
その一方、地元で買える場所は多くありません。そこで、組合員のつくる製品を集め、販売しているのがこのギャラリーです。本真珠と見紛うクオリティの人造真珠を気軽に買い求めることができます。試着しながら買い物ができるショップで、技術・製法に関する展示も充実し、ショールームの役割を担っています。
もともとizumi pearl & glass Galleryの存在は知っていて、気になっていました。日本の人造真珠は、発色がきれいで耐久性が高いと聞いていたんです。たくさん並んでいるのを見ると、アイテムごとに微妙に色が違うのもわかりました。私は、ずっと探していたカスミソウのようなアクセサリーを買うことができて大満足! ダンスの衣装や着物に合わせようと思います。
「いずみガラス」の技術を守る老舗・佐竹ガラス。職人に教わり蜻蛉玉づくりにチャレンジ
ギャラリーから10分ほど歩き、「佐竹ガラス株式会社」に到着!
佐竹ガラス株式会社は、1927年に前身となる佐竹ガラス製造所として創業した、日本で唯一戦前から続く、工芸用色ガラス棒メーカーです。ガラスの棒材を製造するメーカーは、佐竹ガラスと大阪にあと1社残すだけで、その希少性がうかがえます。さらに、バーナーを使ったランプワークで、蜻蛉玉を始めとする美しいガラス作品を生み出しており、技術者集団として独自の地位を築いています。
佐竹ガラスの社屋は、創業から間もない昭和前期に建てられたもの。主屋や作業所など計6つの建物が国の登録有形文化財に指定されています。まずは、工場内を見学させていただきました。
職人たちによるランプワークも、火曜〜金曜の午前であれば目の前で見学できます。
こちらは、棒ガラスの製造工程。坩堝(るつぼ)で溶かしたガラスを、一定の太さになるようレールの上にまっすぐ引き流していく「棒引き」と呼ばれる作業です。ガラスの温度が変化するので、スピード感や力加減が重要で、一気に引かなくてはなりません。飾らないスタイルながら温かみもある木造の大空間も見ものです。
見学の後は、いよいよ蜻蛉玉づくり体験です。スタッフの前田正悟さんのレクチャーからスタート。
このプログラムでは、棒ガラスを溶かして鉄の芯棒で巻き取ることで、丸い蜻蛉玉をつくっていきます。実演しながら「芯棒は水平を保って回し続けて」「ガラスは手前、芯棒は炎の向こうでキープして」など注意点を教えてもらい、いざ実践!
初めは、前田さんのサポートを受けつつ制作開始。温度差でガラスが割れないよう、芯棒を熱するところからトライ。
柔らかくなったガラスを落とさないよう、慎重になりすぎず、手早く巻き取るのが大変だったようです。そしてきれいな丸にするには、一定のスピードで芯棒を回し続けることも重要。一瞬も気を抜けない作業に、廖さんは終始真剣な表情で取り組んでいました。
熱せられてオレンジ色のままのガラスに、カラフルな粒状のガラスをまぶし、再び炎の上へ。この粒が溶け込むことで、ふたつとない柄になるのです。
体験を振り返り「難しかったけど、お気に入りの蜻蛉玉ができた」と話す廖さん。そんな廖さんに「自分なりの表現を楽しんでもらいたいと同時に、ガラス細工の難しさを知ってほしいという思いもあって、体験教室を開いています」と話すのは、佐竹ガラスの3代目・佐竹保彦さん。
バーナーで熱したガラスを思い通りの形にするには、熟練の技術が必要です。手仕事によって生み出される作品は、ガラス特有の冷たさを感じさせない独特の温かみを持ち、希少価値の高い工芸品として多くの愛好家に支持されているのです。
もともと棒ガラスの工場として発展した佐竹ガラスですが、2000年代半ば頃から、蜻蛉玉を始めとした工芸品の製作にも取り組んでいます。
そこには「ガラスに関する多面的な技術を後世に伝えたい」という思いがありました。佐竹さんは「体験して初めてわかる難しさがあったでしょう? 知ることで職人に対して尊敬の念が芽生え、その気持ちが、この産業が続いていく力につながります」と語り掛けるように教えてくれました。
敷地内には、自社製品を販売するショップが併設されており、ガラス細工やアクセサリー、ビーズなどを購入できます。
蜻蛉玉づくりは、いろいろなことを同時に考えながら手を動かさないといけないので、大変でした。少しでも気を抜くと、芯棒が斜めになってしまって、形がいびつになってしまうんです。それと比べて、職人さんたちがつくったものは本当にきれい! 佐竹さんがおっしゃっていたみたいに、自分が実際に体験したことで、職人さんたちの技術のすごさを感じることができました。自分でつくったのもお気に入りですけどね(笑)。
火曜日〜金曜日 9:10〜10:10
料金:無料
※英語対応可
教室(要予約)
平日 9:30~/14:00~(各回19名まで)
土曜 10:00~/13:00~(各回3名まで)
日曜 10:00~/13:00~(各回4名まで)
料金:とんぼ玉制作体験やガラス工芸体験など、曜日と内容により価格が異なります。
※英語対応可
絶品うなぎとこだわりスイーツで、お腹も大満足!
佐竹ガラスの工場で頭と体を使った後は、ランチを求めて移動。佐竹ガラスから8分ほど歩き、うなぎとすっぽん料理で知られる「季節料理 利休」に到着しました。利休は素材や調理法にこだわったうなぎや、旬の料理をリーズナブルに味わえる店として、創業34年を超える今も高い人気を集めています。
生きた状態で仕入れたうなぎは、店内の生簀(いけす)で泳がせ、注文が入ってからさばきます。通常の炭よりも高火力の備長炭を用い、外はパリッと、中はふっくらと焼き上げ。創業以来、継ぎ足しながら育ててきたタレは、店の歴史とともに積み重ねられた旨味が宿っています。
オーダーしたのは人気メニューのひつまぶし(2,860円税込)。ひつまぶしの食べ方は説明に従い、まずはしゃもじで4等分。薬味や出汁と一緒に楽しみます。
利休さんのうなぎは、今まで食べたどのうなぎよりもおいしかったです! 柔らかさと香りが違った気がします。新鮮さへのこだわりが強いからかな。ひつまぶしは、いろいろな食べ方ができるから楽しいですよね。特にお出汁がおいしくて感動しました。こんなに丁寧なのに価格はリーズナブルで、それもびっくり。大阪府外からもリピーターが来られると聞いて納得です。
厳選卵と地元産はちみつでつくるスイーツをお土産に
旅の最後は、お土産を求めてスイーツショップを訪問。季節料理 利休から徒歩3分で「SWEETS ATELIER TWINKLE」に到着しました。
こちらは2023年6月にオープンした、双子のパティシエによるお店で、特に人気なのが特濃生プリン(470円)と特濃かたプリン(440円)です(すべて税込)。高級ブランド卵「日本一こだわり卵」のうち、さらにエイビアリーという平飼いによる飼育法で生産された卵のみを使用しています。やさしい甘さは、和泉市産のはちみつ「いずみつ」によるものなのだそう。こだわり卵の卵黄のみを贅沢に使用しており、濃厚ながらすっきりとした味わいが特徴です。
廖さんは、人気No.1、No.2の「特濃 生プリン」「特濃 かたプリン」をチョイス。
食材一つひとつに対し、厳選して良いものを求め続けていると感じました。特に卵は「全国から30種類を取り寄せて、試作して食べ比べた」と聞いて驚きました。プリンもフィナンシェもたくさんフレーバーがあるから、リピートする人たちの気持ちもよくわかります。説明を聞いているとどれもおいしそうで、かえってどれにするか悩んでしまいました(笑)。
職人たちの息づかいを感じる、気軽で濃厚な小旅行なら和泉市へ
SWEETS ATELIER TWINKLEから、ゴール地点のJR信太山駅は約3分。1駅区間という短距離、そしてわずか半日という短時間に、伝統産業やグルメがぎゅっと詰まった小旅行でした。
廖さんも「中国から友だちが来ても、大阪市内や京都にずっといることが多いんです。でも今回のルートなら、街で見かける土産物のルーツを知って、体験までできます。散歩くらいの感覚で巡れるのも意外でした」と満足そうに話していました。
時代やジャンルを越えて、職人気質を持つ人々が織りなす和泉市には、独特の魅力があります。五感をフルに使って、その奥深さを味わってみてはいかがでしょうか?
Photo:北川暁(Satoru Kitagawa)
Edit:プレスラボ
Direction:人間編集舎
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