近鉄・大阪難波駅から電車に乗って10分とアクセス良好で、駅を中心に古き良き昭和レトロな商店街が広がる「布施」は最近、「夜がアツい!」と評判の街なんです。「道頓堀や新世界も良いけど、観光客向けではない、野生の大阪を体験 したい!」そんな通な人にうってつけの布施を、この街で生まれ育ったライターのヨッピーさんが案内します。
こんにちは。ヨッピーです。東大阪の「布施」の街は思いっきり地元で、子どもの頃から馴染み深い街です。最近になって布施は「知る人ぞ知る、良い飲み屋がたくさんある街」という具合に知られつつあり、雑誌『Meets Regional』で一冊丸ごと特集が組まれるまでになりました。
ちなみに僕は今東京に住んでいるのですが、エッセイストの犬山紙子さんなど、東京で「布施」のことを知っている人に会うと、だいたいニチイの話で盛り上がり、「ニチイのクレープはとにかく美味かった」みたいなくだりで「わかる~!」とがっちり握手します。
ニチイはかつて布施にあったデパート。ニチイの屋上にはゲームコーナーがあって、母親が買い物中に「これで遊んどき」と100円を渡され、それを受け取って1回10円のゲームにいそしむ子どもたちで溢れていました。
ちなみに、ニチイのクレープはニチイの駐輪場にお店があった「ワゴンボーイ」のクレープのことで、場所を変えて現在でも布施駅近くで営業中。
最近は梅田も難波も天王寺もずいぶん綺麗になり、大阪の街が変わりつつあるけど、昔も今もたいして変わらない、「野生の大阪」が色濃く残っているのがこの布施なのだ。
モーニングが美味しい喫茶店、コロッケが美味い肉屋、地元の人に愛される銭湯などなど、まだまだ残る昭和レトロな風景に心惹かれ、いよいよ全国から、そして世界中から観光客が来るようにもなった布施の街。そんな布施は昼間だけじゃなく夜もアツいんだということを、頑張ってレポートしたいと思います!
そして今回、僕がご案内するのはオーストラリア人のトーマスさん(写真右)。日本を訪れた際に現在の奥様と出会い、結婚。その後日本に移住してから主に外国人向けの観光ガイドとして活躍中。道頓堀や心斎橋、新世界など王道コースに行くことが多く、布施に来るのははじめて、とのこと。今回は英語対応可能なお店を軸に、布施の街をご案内したいと思います!
※日本国内では、飲酒・喫煙は20歳以上の方のみ可能です。これは日本の法律であり、外
国籍の方を含め、例外なくすべての人に適用されます。
Guide
多国籍な鉄板料理が楽しい布施の名店「よしひろ」
「布施のナイトカルチャーを知るにはまず腹ごしらえを」ということで、最初にやってきたのがこちら、お好み焼きの名店「よしひろ」。
よしひろは創業77年という老舗のお好み焼き屋さんで、戦後間もない頃からこの布施の地でお好み焼き屋さんを営業しているのである。
そんなよしひろは単に「老舗だからえらい」と言いたいのではなく、普通のお好み焼き屋さんにはないようなメニューも楽しめるからえらいのだ。
実はよしひろの3代目はアメリカでシェフとして働いていたことがあり、その経歴を活かしたガレットやミーゴレン、チーズフォンデュといった多国籍な鉄板焼きメニューが楽しめる。英語も対応可能なので外国人観光客を案内するにはぴったり!
もちろんお好み焼きだって絶品!
そして、メニューのあれこれが美味しいだけでなく、よしひろは若いスタッフの人たちが元気よく働いていて、いつも気持ち良い接客をしてくれるのも大好きなポイントのひとつ。
そんな風に僕はよしひろが好きなのでX(旧Twitter)で色んな人に「布施に来たらとにかくよしひろに行け」と言いまくっていたせいで、「いつもありがとうございます!」とお店の人に顔を覚えられてしまっていてちょっと恥ずかしい。
そして、「創業77年」と聞くと「大丈夫かな? ちゃんと跡継ぎはいるのかな?」と心配になりますがご安心ください!
日本生まれアメリカ育ちのハーフ兄弟が跡継ぎとして日々奮闘中! お二人は英語ペラペラなのでとにかく困ったらよしひろに来よう! ぜひ二人に会いに来てください!
お好み焼きはもちろん、世界の鉄板料理を楽しめるのは外国人にもウケると思うよ!
個性溢れるスナック風カラオケ「ジャンカラ ディープ布施」
「ほな、ええとこ案内したるわ」と言ってトーマスさんを連れてきたのがカラオケチェーン「ジャンカラ」。「あれ? ジャンカラなんてどこにでもあるのでは?」って思うじゃないですか? でも店名をよく見てください。「ジャンカラ ディープ布施店」なんですよ。ディープ……?
そう、実はこの布施のジャンカラ、ジャンカラ初となる、オープンカウンターを採用した第一号店なのだ。
この布施店で実験的に導入したオープンカウンターが好評で、今では全国各地にこの方式のお店があるらしいのだけど、発祥がこの店だと思うと感慨深い。
オープンカウンターがあることでお客さん同士が盛り上がり、そして仲良くなって「ほな、またここで」とゆるく約束して帰っていく、そんな関係性が構築されるのだという。
店内はスナック街を思わせる造りになっていて、それぞれ個性の異なる個室がたくさん用意されている。
こちらは「金網バンギャル」のお部屋。最前列を陣取るバンギャルのヘドバン※を真似っこして遊ぼう。
※ヘドバン:「ヘッドバンギング」の略。音楽に合わせて髪を振り乱しながら、大きく頭を上下に動かすこと。このやりすぎで首を痛める人が本当に多いらしいのでご注意。
Oasisが来日公演するタイミングだったので歌っていただいたらまあ当然ですが上手いですよね。英語ネイティブはやはり違う……!
ちなみに飲み放題のアルコールバーまであるのですが、飲みすぎた上でヘドバンするとひどいことになるのでくれぐれもお気をつけて……!
屋台で乾杯! アツアツおでんに焼きラーメン「時代おくれ」
カラオケでカロリーを消費したら小腹が空いた、ということで今度は「時代おくれ」へ。
時代おくれは地元出身のオーナーによる「福岡の屋台文化を大阪に輸入するんや!」の掛け声でスタートしたお店。屋台っぽい造りになっており、「焼きラーメン」など福岡のソウルフードも食べられる。
布施は「古き良き昭和レトロな商店街」などと言いつつ、福岡の屋台風にはじまり、韓国居酒屋にベトナム居酒屋、インドやスリランカのスパイス店など多国籍化してきていて、かなりカオスなことになっていておもしろい。
透き通ったお出汁が光る塩おでんは絶品! お酒がすすみます。
屋台におでんにビール! これは映(ば)えますなぁ~!
オーナーがオーストラリアでワーホリ経験があって、話が盛り上がった! 屋台って日本っぽくてワクワクするね。
日曜日 19:00〜1:00(L.O. フード 0:00 ドリンク 0:30)
ザ・昭和の雰囲気が残る横丁「愛染小路」
続いてやってきたのは「愛染小路(あいぜんしょうじ)」。「ザ・昭和」という雰囲気を残した典型的な横丁なのですが、横丁の雰囲気はそのままに、新進気鋭の新しいお店が開業するなど最近活気が出ている通りでもあります。
こういう昭和テイストな横丁は外国人にも喜ばれるのではないでしょうか。
日本のレトロゲームが大集合! 駄菓子BAR「ネバーラン堂」
そして愛染小路を抜けた先にある、ファミコン、スーファミなどレトロなゲームがやり放題の駄菓子BAR「ネバーラン堂」へ。この日は「スト2(ストリートファイターII)」で対戦したのですが、学生時代にやりこみまくってたゲーマーであるところの僕が、トーマスさんをボッコボコにしました。大変申し訳ありません。
所せましと並べられた駄菓子の数々! 懐かしい!
そんな、良い年こいたおっさんが小学生の頃に戻れるネバーラン堂さんは最近、布施の街を特集したMeetsの表紙にもなった! Meetsが布施を取り上げる時代が来るなんて……!
レトロな街並みの中に、若い子たちも楽しめる場所がちゃんとあるのが良いですよね!
商店街をぶらり歩き。
「お祭りの時はここをデカいだんじりが通るんですよ」などと解説中。
その時の写真がこちら。
布施の商店街はお祭りも盛んで、「土曜夜市」という夏に定期的に開催されるお祭り以外にも、「妖怪あつめ」「布施プロレス」「子ども縁日」「ミュージックフェア」などさまざまなお祭りが開催される。
街の妖怪を探せ! 下町の商店街に潜む不可思議な「布施」の魅力
ラム酒と葉巻を嗜む隠れ家「BAR RACK SPIRITS」
そして最後にやってきたのがこちらの「BAR RACK SPIRITS」さん。
なんとタバコの自販機がドアになっているのである!
これにはトーマスさんもびっくり!
ラム酒がメインのお店なのですが、ここに来たときにぜひ一緒に試していただきたいのが葉巻です!
「吸い方がサマになってますね」と褒められた僕。
葉巻なんて僕にはサッパリわからないのですが、「このお酒にはこの葉巻」といった風におすすめの組み合わせも教えてくれるので、初心者にも安心です!
最近は後述するSEKAI HOTELからおすすめされたお客さんが来たり、Googleマップで検索して来たり、海外からの観光客も多いそうだ。
どちらかと言うと、下町らしいガヤガヤしたお店が多い布施の街で、しっぽりと大人のお酒を楽しみたいときにぜひ来ていただきたいお店です!
日曜日 19:00〜0:00
地元民ご用達のおすすめスポットたち
こちらが「SEKAI HOTEL Deep Osaka Experience」。商店街の中に客室が点在する、まったく新しいタイプのホテルだ。
SEKAI HOTELは商店街の空き店舗や空き家を改装し、ホテルの受付や客室としてそれぞれ使っている。
SEKAI HOTELの大浴場は近所の銭湯だし、夕食会場は冒頭で紹介した「よしひろ」だったりするし、朝食会場は喫茶店のモーニングだったりとSEKAI HOTELを中心とした街歩きが盛んに行われていて、「これは新しい!」と布施の街に色んな人がやって来るようになった。
なにわ健康ランド湯〜トピア
そしてSEKAI HOTELと共に「目的地」として全国各地からサウナ好きが集まる「なにわ健康ランド湯~トピア」。こちらは僕も子どもの頃からちょくちょく通っている温浴施設なのだけど、サウナブームの到来と共に館内各所をゴリゴリに改装し、今や大阪でも屈指の人気施設になった。
昨今は大阪市内のホテルがずいぶん値上がりしているので、この「湯~トピア」を定宿にしている出張族の人も多いそうです。お酒を飲み歩く前にひとっ風呂浴びるのもおすすめ!
※タトゥーがある方は入館できません。
※日本語でのみ、対応可
クラフトビア タヴァン(Craftbeer Tavern)
クラフトビア タヴァンは布施駅すぐ近くのバル・ダイニングバー。箕面ビールや京都醸造などの関西ブルワリーを中心に、美味しい樽生クラフトビールを常時6種類取り揃えています。
ソーセージ、タンドリーチキン、フィッシュアンドチップスなどお酒が進むメニューもたくさん! 最大70名収容できる広い店内は、家族や友達みんなとワイワイ飲むのに持ってこいですね。
日曜日・祝日 17:00〜23:00(L.O. 22:30)
大阪らしい、大阪の街で
というわけで、外国人にもおすすめできる、布施の街のあれこれをご紹介しました。
考えてみると僕たちも旅行に行くときは「ザ・観光地」という場所に行くのももちろん楽しいけれど、こういう地域密着というか、地元の人で盛り上がる横丁なんかに顔を出すのが楽しかったりするもの。道頓堀や新世界といった、「いかにも」という場所を一通り巡ったあとは、布施のように古き良き大阪がそのまま残る街で飲み歩くのも楽しいのではないかと思うのです。
布施で遊んだあと、大阪の人に出会ったらぜひ「この間、布施で飲みましたよ」と言ってみてください。きっと「ディープな所に行きましたね~!」とおもしろがってくれるはずなので。布施って、そんな街です。
Photo:高津祐次(Yuji Takatsu)
Edit:オカジマアヤノ(Ayano Okajima)
Direction:人間編集舎