名だたる武将らがせめぎあった戦国時代。藤井寺市でも、天下分け目の大戦「大坂夏の陣」の最終決戦が行われ、名将らが激突しました。道明寺合戦です。あれから410年。 “道明寺天神通り商店街の後藤又兵衛”こと篠田朋宏(しのだ ともひろ)さんの案内で、大勝負ゆかりのまちを巡って、豊かな歴史と話題のグルメをご紹介します。
関連ツアー
大阪:甲冑を着て歴史を巡る!戦国「道明寺合戦」ツアー
- 道明寺合戦の地で有名な戦国武将になりきる甲冑体験
- 1400年以上の歴史をもつ道明寺天満宮や道明寺を甲冑姿で拝観。
- 老舗の地元ローカルフード「KOFUN天」に舌鼓
大阪府内で市としてはもっとも面積が小さい藤井寺市は、3キロ四方のコンパクトな市域ながら、世界文化遺産「百舌鳥・古市古墳群」をはじめ多くの古墳や由緒ある神社仏閣が存在し、特産品も豊かな魅力あふれるまちです。
なかでも道明寺は今も昔もこの一帯の中心地であり、戦国時代に幕を引いた「道明寺合戦」の舞台として知られています。
道明寺合戦とは、1615年5月6日、豊臣方の後藤又兵衛・真田幸村軍と徳川方の伊達政宗軍がこの地で繰り広げた激戦のことで、徳川勢が勝利したことにより混乱の時代が幕を閉じました。そんな“天下分け目の戦い”から400年後に当たる2015年、節目の年を記念して、市民らが手作りの甲冑を身にまとって400年祭りを開催。以後「道明寺歴史行列」や「道明寺歴史仮装大賞」など、市民が甲冑姿で街を練り歩くイベントが名物になっています。
そこで今回、道明寺や合戦まつりについて詳しい「味大かまぼこ」の2代目店主の篠田朋宏さんに、日本の文化や歴史、和食全般が大好きなアメリカ出身のジャッキーさんを案内してもらいました。
合戦の舞台となった「道明寺」駅までは「大阪阿部野橋」駅から準急に乗って19分。駅前に建てられた「大坂夏の陣 道明寺合戦記念碑」へ向かうと、レプリカの甲冑をまとった篠田さんに出会うことができました。
Guide
昭和45年(1970年)に先代が開業した「味大かまぼこ」の2代目店主。昔ながらの石臼で丹念に練り上げ、独自の味付けで1枚1枚手づくりするかまぼこ、ちくわ、はんぺんの味は格別。「道明寺合戦まつり」を企画した道明寺天神通り商店街の会長も務める。
アメリカ・サンディエゴ出身。バリスタ、スケーター、モデルと多彩な顔を持ちながら、「大阪LOVE!」を豪語し、関西弁をナチュラルに使いこなす。
腹が減っては戦もできぬ!道明寺天神通り商店街を食べ歩く!
すっかり意気投合したふたりは、駅前からまっすぐ西へ延びる約300mの通りに沿って、地元の常連客が通う食堂や食料品店、レトロな喫茶店などが約30軒並ぶ「道明寺天神通り商店街」を歩き始めました。
みちすがら「めちゃ、かっこいい!」と絶賛するジャッキーさんに「これは、後藤又兵衛の装身具。大坂夏の陣で活躍した『豊臣五人衆』の一人で、真田幸村と並ぶ英雄なんですよ」「こちらは軍配。武将が指揮に使った小道具です」などと説明する篠田さんもうれしそう。
とてもリアルな甲冑で、かっこよかったです。武将ごとに細かいデザインが違うようで、機会があれば是非ほかの武将たちの甲冑も見てみたくなりました。駅前から続く商店街には気になるお店がいくつも並んでいて、店先でお店の人と挨拶やちょっとした会話も交わすことができて、楽しかったです。
おいしくてかわいい! 映える天ぷらで小腹を満たす!
一本道の商店街をのんびり歩くこと、数分。篠田さんが店主を務める「味大かまぼこ」に到着しました。1970年の創業当時から変わらぬ製法で作られた練り物が並ぶショーケースを前にして、二人とも満面の笑みを浮かべます。
「どうぞ、召し上がれ」と差し出された「KOFUN天」に「わぁ、かわいい」と思わず声が出たジャッキーさん。地元を“古墳のまち”として盛り上げようと篠田さんが考案した古墳型の天ぷらで、食べ歩きにぴったりの人気商品。天ぷらというと野菜や海鮮などの具材に衣をつけて揚げたものをイメージしがちですが、関西では練り物の揚げ物のことも天ぷらと呼びます。紅ショウガやキクラゲ、トウモロコシといった練り製品と相性抜群の食材を練り込んであり、あとを引くおいしさです。
どれもこれもおいしそうで、ひとつにしぼるのが難しい……。食べてみるとほんのり温かくて、ふわふわ。すごくおいしくて、いくらでも食べられる。見た目もかわいいし、これはみんな、大好きだよね。
風情ある古民家カフェで、名物の「竹かごランチ」を味わう!
続いて 「昼食に」と訪れたのが、焼き鯖が名物のお店です。
「食堂佐市」は、幕末に尊王攘夷運動を起こした「天誅組(てんちゅうぐみ)」の子孫が営む古民家カフェ。志士たちの志を受け継ぐように、2023年に静かな町家をオーナー自らDIYして開店しました。
趣ある店内には、和の小物や古い家具が配され、どこか懐かしい空気が漂う店内で、名物の焼き鯖をメインに選べる「日替わりランチ」をいただきました。
豊富なドリンク類のなかから、ジャッキーさんは愛らしい「クマコーヒー」をチョイス!
「やばい、かわいすぎる」とそのビジュアルにすっかりほだされていました。
食後の一杯をいただきながら、店名の由来について尋ねたところ「『和田佐市』というのが、ひいひいじいちゃんの名前なんです」とオーナー。幕末の尊王攘夷運動家として活動し、天誅組河内勢の一員だったそう。「ほら、ここに」と壁に飾った絵を指さしながら「当時の絵にもその姿と名前がちゃんと描かれているんですよ」とにっこり笑って、教えてくれました。
日本らしくて、とても雰囲気が良いお店でした。名物の焼き鯖はとてもジューシーで、塩加減もちょうどいい! 竹かごに並んだおかずも、どれもぜんぶ、やさしい味付けでおいしかった。きれいに盛り付けられてあるのもうれしいですね。店主さんの先祖のお話もとても興味深かったです。
藤井寺市のランドマーク、道明寺&道明寺天満宮を順に巡る!
お腹も心もすっかり満たされたジャッキーさん。汗ばむほどの晴天だったこの日、甲冑を脱いで軽装になった篠田さんと連れ立って、道明寺へと向かいました。
道真公ゆかりの地で誕生した関西風桜餅
道明寺は、594年に土師の氏寺として建てられた尼寺です。土師(はじ)氏の末裔だった菅原道真(すがわらのみちざね)公が左遷先の大宰府へ向かう途中、道明寺の住職だった叔母の覚寿尼(かくじゅに)に別れを告げに訪れた際、身を案じた覚寿尼が持たせた食事が「道明寺糒(ほしいひ)」でした。
もち米を蒸して乾燥させて砕いた糒は、手軽に栄養補給できる保存食として古くから重宝され、兵糧米として毎年、将軍家や武将に献上されていた時代もありました。豊臣秀吉もその一人で、和紙に書かれた「ほしいひ」は秀吉の筆跡です。
一般に販売されるようになったのは明治時代になってから。それが和菓子の原料に使われるようになり、発祥の地である「道明寺」をそのまま商品名にした関西風桜餅も誕生しました。
道明寺を後にして、歩くこと5分。天満宮が見えてきます。
一帯にはかつての面影を感じさせる街並みが残り、どこか懐かしく、おだやかな気分で散策を楽しむことができます。
学問の神様と梅園で知られる天満宮
道明寺天満宮といえば、学問の神様・道真公と梅の名所として知られています。
その起源は実に1400年以上も前にさかのぼります。一帯は古代氏族・土師(はじ)氏の本拠地であり、彼らの祖神として『日本書紀』にも名を残す天穂日命(あめのほひのみこと)を祀ったのが始まりとされています。のちに、この地をたびたび訪れた道真公と、彼を深く慈しんだ叔母・覚寿尼(かくじゅに)公が祭神として加えられ、現在の天満宮のかたちが整えられました。
道真公はその卓越した学識と誠実な人柄から、やがて「学問の神様」として全国で信仰を集める存在となり、彼が生前に愛用した品々や遺品の数々は、今日では国宝として伝えられ、境内の宝物館において、その歴史とともに静かに語り継がれています。
道真公が愛した梅は今も時季がくれば境内で咲き誇り、「梅まつり」ではたくさんの参拝者が梅園を訪れて賑わいます。
篠田さんのご紹介で、宮司の南坊城 光興(みなみぼうじょう みつおき)さんに話を聞くことができました。天満宮では結婚式場としても人気があるため、宮司でありながらウエディングプランナーの肩書きもお持ちであり、天満宮に隣接する地域拠点「MONZEN」の仕掛け人の一人でもあるという実に博識多才な方です。
南坊城さんによると「道明寺合戦では焼かれずに済んだ」という本殿。「この合戦は用意周到に始められたものではなく、偶発的だったため、敵の追撃を断つために一帯を焼き払う時間もなかったのでしょう。時間があれば、おそらく、ここも焼かれていたでしょうね」と補足。
ほかにもいくつかの道明寺合戦にまつわる史実を伝えてもらい、参拝の作法も教わったジャッキーさん。終始、感慨深い表情で聞き入っていました。
観光で立ち寄ることが多い神社や寺院。それぞれに歴史や伝統があって、慣わしも違って、日本文化って本当に奥が深いですよね。日本に住んで6年になりますが、まだまだ知らないことだらけで、知ると背筋が正される思いです。これから神社やお寺をお参りする際の心もちもより厳粛なものに変わりそう。教わることができてよかった!
唯一無二のありがたい味がする、地ビールでリフレッシュ!
この日の最終目的地は、天満宮の隣にある「MONZEN」です。
ここは2022年にオープンした、地ビールやフード、イベントを通じて、“道明寺らしさ”を体感できる複合施設。長年空き家だった築96年の日本家屋が、リノベーションによって、地域の人々が暮らしを楽しみながら、まちの魅力も発信できる拠点へと生まれ変わりました。
珈琲とティラミス、フレッシュな道明寺ビールが楽しめる「縁と緣」と「道明寺麦酒」が併設されていて、天満宮の行き帰りにはぜひ立ち寄りたい場所のひとつです。
道明寺麦酒を代表するブランド「美陵(みささぎ)ビール」は季節限定フレーバーを含めると全14種。藤井寺市以外の飲食店や通販でも購入できますが、サーバーから注いで飲むことができるのは「MONZEN」だけ!
道明寺麦酒の生みの親である森田 剛浩(たけひろ)さんから、いろんな音楽を聴かせて作る、おもしろいビール「美陵MUSICエール」をおすすめしてもらいました。
ほかのビールとどう違うのでしょうか。飲み比べてみることに!
「美陵エール」と「美陵MUSICエール」とでは後味がちょっとちがうんですよね。もとになっているビールは同じだから全体的な味は似ているのに「MUSIC」の方がすっきりしている。「梅ホワイトで使用する完熟梅は、天満宮の梅園で採取したもの」だと聞くと、持ち前のおいしさに加えて、幸せを少し分けていただいたようなありがたい気持ちになりますね。
「美陵MUSICエールは、この特製スピーカーを6つ、ビアタンクに取り付けて、振動でビールに音楽を伝える仕組み。藤井寺市の応援ソング(藤井寺にゆかりのある人から一般公募で寄せられた楽曲のなかから見事グランプリに輝いた1曲)をひたすら聴かせる以外の工程は、美陵エールとまったく同じですよ」と森田さん。
道明寺駅からすぐ!話題作のロケ地も探訪
最後にもう1枚。ジャッキーさんと記念撮影を行った場所がこちらです。
道明寺駅から歩いて数分にある「玉手橋」は、大ヒット映画『国宝』のロケ地になった場所です。この橋の上で主人公のふたりが青春の1ページを刻んだり、挫折や劣等感を味わったりと、成り行きに欠かせないシーンが何度も撮られているため、映画を観た人ならすぐに「あの橋がここか!」と思い当たるはず。
今はなき玉手山遊園地へ向かうルートの玄関口に架けられた橋だったこともあり、遊園地への入場ゲートを意識した白い塔と赤い欄干のコントラストが美しい吊り橋。たくさんの住民が往来する生活路の一部ですが、最近は『国宝』ファンの姿を多く見かけるようになりました。
玉手橋は藤井寺市ではなく隣接する柏原市の所有なのですが……道明寺に来たついでに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
歴史を知ることで観光の深みも感動も増す!ありがたいまち、道明寺
道明寺を歩いてみると、合戦の舞台や逸話が残っていて、確かにここで時代が大きく揺れ動くほどの戦いが行われたことを実感します。けれど、いまこの地で息づいているのは、争いの記憶に縛られることなく人々が紡いできた平和な日常と温かなもてなしの心。歴史を語り継ぐ声に耳を傾け、地元の味に舌鼓を打ちながら、そのありがたみをかみしめることができる道明寺のまち歩き、みなさんもぜひ出かけてみてください。
Photo:西村由起子(Yukiko Nishimura)、トミモトリエ(Rie Tomimoto)
Edit:西村由起子(Yukiko Nishimura)
Direction:人間編集舎
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