豊かな自然と文化が息づく箕面市。今回はそんな土地で生まれ、世界でも受賞歴を誇るクラフトビール「箕面ビール」にスポットを当ててご紹介。箕面の街で愛されてきた背景を、ドイツ出身のアンネさんと夫・ユウスケさんと共に覗いていきます。
関連ツアー
大阪:大自然の美しい滝と地元の格別なクラフトビールが飲めるハイキングツアー
- 自然あふれる美しい山道と澄んだ「箕面の大滝」に癒されるハイキング
- ガイド同行で、道中の見どころや歴史も楽しめる
- ハイキングの後は世界のコンクールで9度金賞を受賞した箕面ビールでクラフトビールを堪能。
北摂の山あいに位置する箕面市は、大阪の中心から電車で約30分とは思えないほど自然が豊かなエリアです。
落差33mの名瀑・箕面大滝や豊かな森に包まれた明治の森箕面国定公園、ダルマがずらりと並ぶ様子が圧巻の勝尾寺など、訪れる人の心をほぐしてくれる魅力的なスポットが多数あります。
そんな箕面の街で長年愛され、いまや全国のクラフトビール好きから注目を集めるのが「箕面ビール」。
今回はドイツ出身のアンネさん、夫のユウスケさんと共に、箕面ビールづくりの裏側に迫ります。箕面のまちでクラフトビールが生まれた背景や造り手のこだわりについて、じっくりお話を伺いました。
さらに、普段は一般公開していない「MINOH BEER」の醸造所を特別に見学。箕面ビールの奥深い世界をご紹介します。
Guide
造り手の声と工場見学から知る、箕面ビール誕生の背景
阪急電鉄箕面線・牧落駅より徒歩10分ほど、閑静な住宅街の一角にあるビール醸造所「箕面ビール(WAREHOUSE)」。
アメリカやイギリスなど海外の権威あるビールコンテストで数多くの賞を受賞し、いまや大阪の代表的なクラフトビールとして名高い「箕面ビール」は、ここで誕生しました。
「箕面ビール」は、定番のペールエールをはじめ、季節ごとに登場する限定ビールまで、どれも素材の良さと丁寧な造りがしっかり感じられる味わいが魅力。
「日常の中においしいビールを」という思いを大切にしながら、流行に流されず、手づくりの温かみを感じられるラインナップを届け続けています。
工場長を兼任する大下香緒里社長(以下、大下社長)にじっくりとお話を伺いながら、箕面ビールができるまでの裏側を見学しました。
「箕面ビール」が創業した1996年よりもさらに以前、当時の日本では酒税法による規制もあり、クラフトビールという概念すらも薄かった時代。
吹田市の酒販店に生まれた大下社長は、海外では当たり前に根付いている「ローカルビール」を楽しむという文化が、日本にもあればいいのにと常々思っていたそうです。
1994年に酒税法が改正され、大手メーカー以外もビール製造を行えるようになりました。この出来事が、いわゆる「日本における地ビール解禁」です。
「豊かな自然に囲まれた箕面市で、地元の人に愛されるビールを作りたい」そんな思いを込めて、1997年についに最初の箕面ビール「ピルスナー」※がリリースされました。
※ピルスナー:麦芽中心で造る本場系ラガーで、ホップの香りと苦味がしっかりした味が基本。一方で日本の大手ラガーでは、コーンや澱粉(スターチ)などの副原料を使って、飲みやすく軽い口あたりに調整されていることが多い。
こうして始まった箕面ビール。今でこそ大阪のみならず、日本でも有数のクラフトビールとして評価されているものの、最初から順風満帆ではありませんでした。
酒税法の改正をきっかけに日本各地でビール醸造所が次々と誕生し、クラフトビールブームが巻き起こりました。しかし「長くは続かなかった」と、大下社長は言います。
今まで大手メーカーのラガービールしか飲んだことのない日本人に、クラフトビールという新しい概念を根付かせるのは簡単ではありませんでした。
また、大手メーカーであれば大量生産によって抑えられるコストも、町の小さなビール醸造所となると容易ではありません。急激なブームに製造技術が追いつかなかったことも大きな要因だったと、大下社長は当時のことを振り返ります。
クラフトビールが下火になった時代は10年以上続きましたが、その間も箕面ビールはコツコツと愚直に、クラフトビールづくりと向き合い続けてきました。
その結果、2009年には「ワールド・ビア・アワード」で金賞を受賞。
さらに2012年には、世界で最も権威のある国際大会のひとつとされる「ワールド・ビア・カップ」でも金賞を受賞しました。
これをきっかけに国内外で高い評価を受けるようになり、現在では世界のコンクールで金賞を9度も受賞するまでに成長しています。
近年、アメリカでクラフトビールブームがはじまったことがきっかけとなり、日本でもブームが再熱。一気にブルワリーも増え、クラフトビールの人気は着々と広まりつつあります。
長年クラフトと向き合ってきた箕面ビールは、実は意外と冷静にこの状況を見つめているそう。
「暮らしてみると、滝や紅葉だけじゃないんですよ」大下社長はそう言いながら、箕面にはまだまだたくさんの魅力が隠れていると教えてくれました。
長年この土地でビールづくりを続けてきたことで、地元の人が晩酌に選んでくれるようになり、旅行客にはおみやげとして手に取ってもらえる機会も増えたといいます。
「箕面ビールは、いつの間にか地域の暮らしに溶け込んでいったんです」そう話す大下社長の笑顔がとても印象的でした。
毎年開催している感謝祭では限定ビールやフードが楽しめるほか、醸造所ならではの雰囲気を感じられるとあって、遠方からも多くの人が訪れるんだそう。
さらに箕面ビールでは、この土地に寄り添うかたちで、ゆずやお米など地元の素材を活かしたビールづくりにも力を入れているといいます。
こうした日本独自のビアスタイルを、ぜひ楽しんでもらえればと話していました。
ビールづくりは機械が自動で進めているものだと思っていましたが、実際に見てみると、どの工程にも人の手がしっかり加わっていて、とても繊細な作業の積み重ねで成り立っていることに気づきました。大手メーカーが作る一般的なビールとは違い、クラフトビールは人が向き合いながら手づくりしているからこそ、生まれる味わいがあるのだと実感しました。
社長のお話を伺っていると、ブームに流されず箕面ビールが長く愛されてきた理由は、派手さよりも「丁寧に続けること」への姿勢にあるのだと感じました。地元の日常に自然と溶け込みながら、訪れる人にとっては旅の楽しみになる一杯でもある。そこが魅力のひとつなのかもしれません。
できたてビールを楽しめる! 直営店ならではの体験
工場見学を終え、やってきたのは箕面ビールの醸造所に併設された直営店「MINOH BEER WAREHOUSE」。ここでは、できたてのクラフトビールをサーバーで注いで、その場で楽しむことができます。
どのビールにも込められた想いや背景を知ったうえで飲む一杯は、自然と解像度が上がりより深く楽しめるもの。アンネさんとユウスケさんも、いよいよ実際に箕面ビールを味わいます。
タンクから直接注がれるビールは、見た目からしてすでに新鮮そのもの。立ち上がる香りときめ細かい泡に、思わず期待が高まります。
注文したのはこちら。奥から順番に「こざるIPA」、「デュンケルヴァイツェン」、「ピルスナー」と3種類のビールをチョイスしました。
アンネさんは現在妊娠中。今回はコーラをいただき、クラフトビールはユウスケさんが楽しむことに。
注ぎたてのビールを受け取ったら、店内の席でゆっくりと乾杯。大きな窓から光が差し込む落ち着いた空間は、観光途中のひと休みにもぴったりです。
最初の一杯は、定番のピルスナー。
ほどよい苦味の奥にしっかりとした甘みが感じられ、全体的にとてもさっぱりとした飲み口。
普段クラフトビールをあまり飲まない人でも親しみやすい味わいなので、「日本の大手メーカーのビールが好きな人なら絶対に美味しいと思う!」と、ユウスケさんも太鼓判を押すほど。食事との相性も抜群に良い一杯です。
次にいただいたのは、ドイツスタイルのデュンケルヴァイツェン。
バナナのようなフルーティーな香りに加え、モルトの甘みやほんのりロースト麦芽の香ばしさも感じられる、複雑で奥行きのある味わいです。
それでいて後味は驚くほどすっきりしていて、とても飲みやすい。今回の中では、ユウスケさんはこれが一番好みだったそう。
最後は人気の「こざるIPA」。
切れのある苦味が心地よいセッションIPAで、柑橘系を中心にパッションフルーツやメロンのような華やかな香りが広がります。フルーティーさとしっかりした苦みが両立し、すっきりした後味で飲みやすい仕上がり。
「クラフトビールに慣れていない人でも手に取りやすく、香りのインパクトがありつつも飲みやすいので、ビール好きの女性にも人気が出そうなタイプだ」とユウスケさんも絶賛していました。
どれも魅力的でしたが、好みとしてはデュンケルヴァイツェンが特に印象的でした。ただ、クラフトビール初心者にはこざるIPAが、普段は大手ビールを飲む人にはピルスナーが入り口としてちょうど良く、どんな人にもおすすめできる一杯があるのも、箕面ビールの素晴らしいところだなと感じました。
直営店では、ビールに合うように考え抜かれたフードメニューが用意されています。
箕面ビールの酵母を活かした焼きたてパンや、自家製ベーコンにソーセージ、サラダや軽いおつまみなど、季節によって内容が変わります。
多彩な料理と箕面ビールのペアリングが楽しめるのも魅力のひとつとなっています。
今回は「ソーセージ盛り合わせ」を注文しました。スキレットで提供される熱々のソーセージは、テーブルに運ばれてきた瞬間から立ち上る香りが食欲をそそります。
一口食べると、外はパリッと香ばしく、中には肉の旨みがしっかり詰まっています。
ドイツ出身のアンネさんも思わずうなるほどのおいしさで、ピルスナーとの相性も抜群です。
日本ではウインナーのような軽めのソーセージが多いなか、ここで味わえるのは本場のドイツで食べるような、焼いて楽しむ肉々しいソーセージそのもの。香りもすごく良くて、「肉を食べています!」感を最高に味わえる、ワイルドな本格ソーセージです。
工場見学で知った歴史や丁寧な造りの背景が、直営店で味わう一杯をより奥深いものにしてくれました。
できたてのビールと、こだわりのフードを合わせて楽しむ時間は、箕面ビールの魅力をいっそう実感できる貴重な体験でした。
※祝日などで変動する場合があります
散策もグルメも楽しむ! 滝道で味わう箕面ビール
箕面公園の滝道へと続く通りには、散策の途中に箕面ビールを楽しめるお店がいくつか点在しています。
今回はその中から、観光の合間に立ち寄りやすい2店舗をピックアップ。滝道散策とあわせて、気軽にクラフトビールを味わえるスポットをご紹介します。
レトロな外観なのに中は今風? 「河鹿荘」で箕面ビールと合わせてお土産やもみじの天ぷらもチェック
箕面公園の滝道中腹あたりにある河鹿荘では、名物土産「もみじの天ぷら」をはじめ、地元ならではのお菓子やおみやげが揃う立ち寄りスポットです。
外観は昔ながらのお土産店といった雰囲気ですが、店内は意外にも落ち着いた空間。ここでは、箕面ビールをメインとしたさまざまなお酒や、軽食を味わうことができます。
歩き疲れたら寄りたい、甘味と一緒に箕面ビールを楽しめる「鈴木商店」
滝道の入り口近く、箕面駅すぐのところにある鈴木商店は、散策の途中に気軽に立ち寄れるお土産店。軽いスイーツや和菓子、ソフトクリームなどを扱う甘味処でもあり、箕面ビールも楽しむことができます。
「スタウト」「ピルスナー」「ヴァイツェン」「ペールエール」といった箕面ビールの人気4種類がラインナップされているほか、紅葉や柚子といった箕面ならではの素材を使ったハイボールなども販売しています。
箕面ビールとともに。箕面市の魅力に迫った1日を振り返って
工場見学から直営店での一杯、滝道沿いのお店巡りまで、今回の体験では箕面ビールの魅力をじっくり知ることができました。造り手の思いや歴史を聞いたうえで飲むビールは、より特別な存在に感じられます。
ビールだけでなく、自然豊かな環境や散策スポットがすぐそばにあるのも箕面市の良さ。街全体がゆったりとした雰囲気を持っていて、訪れるたびに新しい発見があります。
箕面ビールの世界観に触れ、思わず惹きこまれてしまう奥深さを実感しました。ぜひ実際に足を運んで、箕面市ならではの心地よい時間を体験してみてください。
Photo:須藤大輝(Daiki Sudou)、福武真緒(Mao Fukutake)
Edit:morondo
Direction:人間編集舎
関連ツアー
大阪:大自然の美しい滝と地元の格別なクラフトビールが飲めるハイキングツアー
- 自然あふれる美しい山道と澄んだ「箕面の大滝」に癒されるハイキング
- ガイド同行で、道中の見どころや歴史も楽しめる
- ハイキングの後は世界のコンクールで9度金賞を受賞した箕面ビールでクラフトビールを堪能。